世界へ羽ばたくJapan Way Interview 矢富勇毅「自分の可能性を信じている」

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世界屈指の強豪・南アフリカの撃破をはじめとするラグビーワールドカップ2015イングランド大会における日本代表の活躍は、普段ラグビーを観ない人々にも波及し、空前のラグビーブームを巻き起こした。 一躍、時の人となった五郎丸歩と同じヤマハ発動機ジュビロに所属する矢富勇毅は、日本代表のバックアップメンバーに選出されたものの、イングランドには帯同できず。チームメイトたちの活躍を遠く離れた日本のモニター越しで観ていた彼は、仲間の歴史的快挙に何を想い、感じたのか。2月末から始まるスーパーラグビーに「ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ」の一員として臨む矢富に、その胸中を語ってもらった。(取材日1月12日)

言い表せない、複雑な感情

■W杯での日本代表の活躍について、何を感じましたか?
「ありきたりな言葉ですが、すごいことをしてくれたなと。特に、南アフリカに関しては『え?本当に勝ったの?』ってみんなで確認し合うくらいの衝撃でした。元々ラグビーが好きな方はもちろん、今回のW杯で初めてラグビーを観た方でも、今回の日本代表が成し遂げたことのすごさというのは分かっているとは思うんですけど、ラグビーをずっとやっている現役の身としては、そのすごさ、衝撃の具合というのは、本当にもう計り知れないというか。言葉では表すことができないようなゲームをしてくれました。でも、ゴロー(=五郎丸)も言っていましたけど、それだけのことができる練習を僕がいたときからずっとしてきたし、南アフリカに勝つという目標に向かって、本当にしんどい練習をこなしてきました。そういった意味では、やってきたことが間違いではなかったことの証明だと思うし、やればしっかり結果が出るんだということが実感できました。ただただ、素晴らしいことをしてくれたなという感覚で観ていましたね」

■「あそこに自分がいれば」という気持ちもありましたか?
「正直に言えば、勝って、喜んで、すぐにイライラしてましたね。イライラというか、感情がよく分からないのですが、『なんで俺、あそこにいないんだろう』って。悔しさも出てきて、笑っているけど笑っていないというか。心の底で、あの場にいたかったなって思いましたし、時間が経って、日本代表がW杯から帰ってきて、脚光を浴びて、悔しさ、羨ましさはあります。でも、それがなくなった時点で、僕の中での選手としての伸びしろはなくなると思いますし、今はただただ、自分に実力がなかったと思って、目の前の試合、目の前の大会にフォーカスして結果を出していこうって切り替えました。勝ったことは嬉しいけど、自分がいないことが悔しくて、複雑な感情ではありましたね」

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大事なのは経験の積み重ね

■日本の戦いで印象に残った試合はありますか?
「日本の試合はライブで、ジュビロのみんなで集まって全試合見ました。正直、アメリカとサモアには勝つだろうと思っていたんですよ。実力さえ出せれば。ただ、やはり南アフリカとスコットランドは格上だと思っていましたし、南アフリカに善戦はしても勝つとは思っていなかったので、本当に驚きましたね。70分まで、これだけいい試合をしてもどうせ最後は負けるんだろうと思っていました。でも最後に劇的な結末で。僕は基本的に、自分が出ていない試合は録画しても残さないのですが、今回は珍しく残しています。そのくらい、自分の中でも印象に残ったし、チームとして可能性を示してくれました。また僕個人にも、新しい夢というか、目標を見せてくれた大会でしたね」
■日本以外の試合で印象に残った試合はありますか?
「優勝したオールブラックスはもちろん全部観ていましたし、個人的にヨーロッパが好きなので、今大会はアイルランドが良いラグビーをしていたので参考にしたり、フランスも強かった。今大会のW杯は僕の中で面白い試合が多くて、ほとんど観てましたね。注目は、リッチー・マコウ、ダン・カーターが引退するといわれていたオールブラックスでしたが、オーストラリアも気になっていました。監督が変わってから良いラグビーをしていたので」
■日本が2位通過していれば、対戦していた国ですね。
「そう、もう少しで対戦できたのですが、3勝したのに決勝トーナメントへ行けなかったのは初めてらしいじゃないですか。そういう意味でも、日本が与えたインパクトは大きかったと思いますけど、そこが“壁”というか、決勝ラウンドに進んだことのあるチームと、まだ進んだことのないチームの差が出たかなと思います。その差っていうのは、トップリーグでも一緒だと思っていて、上位に行けそうで行けないチームって結構あるんですね。何が差なのかと言えばたくさんあるとは思いますけど、僕は“経験”だと思っています。大きい言葉ですけど、僕たちも以前はトップ4との壁があって、何かがキッカケで突き抜けたときに、空気感も変わったのを覚えています。それを多分、日本は初めて体験したんじゃないかと思うので、この経験を、この先すごく大事にしていかないとダメですし、この経験があったから2019年のW杯で予選リーグを突破できたんだよって言えるようにしないといけない。そういう積み重ねが差になるのだと思います」
■W杯後のトップリーグの熱狂ぶりについて、どう感じましたか?
「それだけのことをしてくれたとは思います。僕はお客さんがたくさん来たとか、取材がたくさん来るとかが嬉しいので、戸惑いよりはモチベーションになりますし、格好悪いプレーはできないなって気持ちにもなります。僕個人としては、すごくいい風に捉えていて、この時、この年に、ラグビーを第一線でできていることは、本当に幸せだと思います」

常勝軍団への階段の途中

■チームは2014-15シーズンからの好調ぶりを維持しているようですが、チーム内の雰囲気は変わりましたか?
「プレーオフ決勝まで行って負けてしまいましたが、あの場を経験できたことで変わったと思います。今年、リーグ戦も1位で突破しましたが、結果に対して内容はそんな良くありませんでした。ただ、それでも勝てたというのが一番変わったところだと思います。すごく悪い試合でも、ある程度力を出せて、勝利できた。それが結果にも出ていると思いますし、この5年間の積み重ねでできた自信とか、そういうところが影響しているのだと思います。僕自身、大学時代に早稲田が強い時期に在籍していて、そういう感覚を体感していますし、似たような雰囲気を今のチームから感じるので、そうした常勝軍団への階段を上っているところだと思います。それは僕だけではなくて、ヤマハのラグビー部にいる選手みんなが感じていることなんじゃないかなと思っています」
■2015-16シーズンに臨むにあたり、自身の中での目標は何でしたか?
「チームに関しては、目前で逃したトップリーグの優勝、そして日本選手権の連覇で、それはブレることなく、決勝で負けた時点で目指すべきものでした。個人としては、頭から終わりまで、しっかりとグラウンドに立ち続けること。ここ数年変わらない僕の中の目標ですが、パフォーマンスどうこうではなくて、グラウンドにいれば、それなりにできる自信というのはずっとありました。ただ、日本代表に残れなかった原因でもある、脆さですね。自分でもタフさが足りないと思っていますし、そのイメージも持たれていると思うので、そういうネガティブな部分を、長く選手をやっていくなら取り除いていかないといけない。しっかりと良いコンディションを保ち続けて、最後までグラウンドに立ち続けたいですね」

悩んだ末の挑戦

■サンウルブズのメンバーに選ばれましたが、意気込みをお願いします。
「オファーが来て、実は結構悩みました。代表にいたときも、大枠なスコッドは聞かされていましたが、怪我のことがずっと引っかかっていて。1年間、満足にシーズンを送れていないのに、スーパーラグビーに行って、また戻ってきて日本のシーズンをこなすというのは、自分の中でイメージできませんでした。自信がないわけではありませんが、ネガティブな印象はありましたね。ただ、大学生の頃から、世界に挑戦したいという気持ちはあったのですが、怪我もあって行くタイミングを逃していました。去年も行くチャンスはありましたが、日本代表にも入っていたので。だから、タイミング的にはここかなって思って、ここを新たな一歩にできたらなという気持ちが芽生えてきました。日本のラグビー界にとって重要な、スーパーラグビーの第一歩に身を置けるというのは、なかなかない、限られた人しか経験できないことなので、それを考えれば、悩む必要もないかな。挑戦してみようと思いました」

サンウルブズでも主力として期待されている

■サンウルブズ創設は今後の日本ラグビーにおいてどのような役割を担うと思いますか?
「昨年、日本代表が世界に『日本ラグビーここにあり』と示すことができたので、それを継続して示していかないとダメだという責任がありますし、スーパーラグビーはやはりそれだけの大きなコンテンツだと思います。今後の日本ラグビーがどうなっていくかを左右するコンテンツだと思いますし、しっかりとやらないとダメなので、言い訳のできない、すごく大事な挑戦だと思っています」

■最後に、スーパーラグビーへの意気込みをお願いします。
「もちろん、やるからには負けたくないですし、簡単にいくとは思っていませんけど、それでもやらないといけない。個人的には、まずは対面の選手には負けないということをしっかり頭に入れてやっていかないといけないですし、世界最高峰といわれているリーグなので、早くそれに対応していきたい。今回はチームとして動くので、海外遠征もありますし、普段の生活の部分からしっかり対応してやっていくことが大事だと思います。通用しないと思ったらオファーを断っていますし、自分の可能性を信じているので、臆せずチャレンジしていきます」

プロフィール

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矢富 勇毅 Yuki Yatomi
京都府京都市出身
生年月日:1985年2月16日
身長/体重:176cm/82kg
所属:ヤマハ発動機ジュビロ
Pos:SH(スクラムハーフ)

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