- Revs your Heart – 黒山健一、待望のニューマシンで完全復活!!

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『YAMAHA FACTORY RACING TEAM』の黒山健一は、今シーズンの全日本トライアル選手権で、7戦中5戦を戦ってわずか1勝と苦しんでいた。しかし、迎えた愛知(岡崎)での6戦目で、実に10年ぶりとなるニューマシンを投入。相棒のデビュー戦で見事、優勝を飾ることとなるが、そんな愛知での大会の前日に収録したインタビューをお届けする。(取材日:10月8日)

ここまでは“我慢”のシーズン

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■シーズン開幕前の体制発表会で、チャンピオンへの強い意志が印象的でした。改めてどのような気持ちで今シーズンに臨みましたか?
正直なところ、ここ数年負け続けていますので、チャンピオンを獲れる獲れないというよりは、そもそも勝負になっていない部分があります。なので、チャンピオン以前に『勝負をしたい』というのが正直な気持ちでした。バイクと乗り手が一体にならないと結果が出ない。これは、ロードレースも、モトクロスも、どのモータースポーツのカテゴリーにも言えることですが、僕だけが頑張っても、バイクだけが頑張っても結果が出ないのが難しいところです。ここ数年、というか、今シーズンに入って、僕の望んでいたバイクの性能が出なかったこと。そのバイクを扱いきれなかった僕のせい、とも言えるかもしれませんが、とにかく走っていても一体感が全くありませんでした。5戦終わってみて、1勝しかできていないことが非常に悔しいです。チャンピオン争い云々よりも、やはり1勝しかできていないという事実に、悔しさ、情けなさ、悲しさがあります。ただ、“一生懸命”という言葉は変ですけれど、全力で勝ちに行くし、手を抜いているつもりはありません。今年は結構、そのあたりのストレスはありますね(苦笑)。去年まではそんな中でも、複数回優勝できていたから「ここを修正すればいける」というような惜しい感覚を持てていたんですが、今年はその「あと少し」「もうちょっと」さえも見えない状況もあったので、この5戦は本当に苦しかった。シーズンここまでを端的に表すならば“我慢”になると思います。

■この第6戦(愛知)からのニューマシン(TYS250Fi)投入は、転機になるでしょうか。
今年5戦走っている中で、従来のバイクではだめだ。僕では扱いきれない。太刀打ちできないとなったときに、従来のバイクに手を加えるという話もありましたが、投入を計画中だったニューマシンを仕上げる方に注力しました。チーム全員が同じ意識を持って、『待ちに待った』というか。よく仕上がってくれたなというのが今の気持ちです。開発から携わって、実際のレースは明日(10月9日)が初めて。試合で走るこのカタチに組み上がったのは今日(10月8日)なんですよ!今まではキャブ(レター)車で走っていたのですが、今回からはインジェクションになったので、それがいわば、従来のバイクとは別の性能になります。良い悪いという表現はしにくいし、全く別のモノともいえるので、これ(TYS250Fi)を扱えるかどうかは僕にかかっている。僕次第です。これまで走っていたバイクでは、僕がバイクをどのようにフォローしていかなければいけないかというテーマがメインでしたが、今回からは対等、もしくはバイクの方が上。バイクの特性を探り当てていって、僕が使いこなせるようになったら、結果もついて来ると自信をもっています。明日のレースに向けては、今日練習走行で乗ってみて、まだ特性を捉え切れていない部分も多くありますが、チーム一丸、開発してきた過程では、今日乗った感触は明らかに僕のフィーリングに合ったバイクになってきているので、乗っていて非常に楽しい。これまでは「このラインの、この場所は走りたくないな。うまくいかないだろうな」という逃げ腰な気持ちがあったのですが、そうしたところが今、むしろ得意分野に感じられる感触があります。「そんな簡単にいかれても今までの悩みは何だったの?」というくらいに。良い悪いで(バイクを)比較、判断できない部分はありますが、ニューマシンの方が明らかに『自分に合っている』という感覚は、武器になりますね。

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必要不可欠な存在「マインダー」

■ゴルフに例えられることもあるトライアルですが、どのあたりに共通点がありますか?
1コース、2コースとあるように、トライアルも1セクション、2セクションと区切られていて、1人ずつ競技を行います。競争方法は、タイムではなくスコア。スタート時点では全員0点。1セクション目で1点つけば、加点1。2セクション目で2点つけば、合計3点になる。最終的に、0に最も近い選手が勝ちです。いかに、ミスを少なくできるかが勝負という点で、ゴルフと近いものはあると思います。

■「マインダー」についても、教えて下さい。ゴルフでいう「キャディ」的な役割を担うと聞きます。
僕は20歳から、なので約18年「マインダー」をつけています。日本ではマインダーという存在があまり重用されていないのが現実ですが、世界選手権では当たり前のように選手はマインダーをつけていますし、職業としても確立されていて、中には高給取りもいます。僕の場合は、実弟(黒山二郎氏)がずっと(マインダーを)やっていますが、父親やチーム関係者、知人がその役割を担っている人もいますし、国内ではレース毎に異なる人にお願いしている選手もいます。世界と国内では、そこに対する意識の違いはありますね。

■「マインダー」の役割とは?
大きく分けて2つあります。ライダーが走るために必要な情報を提供する役割が1つ。もう1つはライダーにミスやトラブルが起きた場合のヘルプですね。前者に関しては、1セクション1分以内に出なければいけないので、そのタイムを測ってもらったり、岩の向こう側へ行く際、見えない岩の向こう側をガイドしてもらったり、ライダーが走るにあたってプラスになる情報を与えてくれます。後者に関しては、高いところから落ちそうになったときに、バイクやライダーを支えたり守る動きをします。あとは、日本ではメカニックも「マインダー」が務めるんですよ。試合中バイクに触れられるのは、マインダーだけなんです。故障やトラブルの際の修理も担います。

■弟の黒山二郎氏の「マインダー」は、世界選手権参戦時代含め20年近いコンビなのですね。
長いこと一緒にやっていますよ。僕らの強みは、兄弟でやっていますので、普段の練習から一緒にできる点ですね。ゴルフやテニスの世界でも、選手とコーチが常にセットになっているイメージってありませんか?錦織圭選手とマイケル・チャンコーチのように。年間契約でね。この選手が活動するときには、このコーチが絶対帯同するという。トライアルでも、世界では一般的に1人のライダーには同じマインダーがずっと帯同します。ただ、日本国内に関しては、友情出演じゃないですけど現実的に「今週末試合があるからちょっとマインダー役手伝って」的な選手もいますし、マインダーをつけられない選手もいる中で、このコンビは強みですよね。

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■「マインダー」の重要度はどれほどのものですか?
僕がトライアルをする時には、必要不可欠な存在です。マインダーがいなければ走れません。試合中は専門用語などが飛び交いますし、観客との距離も近いので「この人たち何をしゃべってるんだ?」と思われるような場面も多々あります。他人が聞くと「バカなこと言っているな」と思われるようなこともあるんですよ(笑)。でも、長年一緒にやってきていますからね。実際にはすごく重要なことを言ってくれているんですよ。

■読者にメッセージをお願いします。
トライアルは、モータースポーツの中では唯一レース中も選手の顔がみえます。ハンサムなのか不細工なのか(笑)、悔しいのか、喜んでいるのかなど、全てわかります。ライダーと観客の距離感の“近さ”も、この競技の特徴です。この“近さ”が観客の方にとっても醍醐味だと思いますよ。ライダーの呼吸まで感じたいという人はかなり前まで来て観ていますし、走る全体像を観たいという人は遠巻きに観る人もいて、自分の観たいスタイル、場所、空間で観戦できますからね。針の穴に糸を通すようなライディングをみるのも、緊張感があって、見所の1つだと思います。先ほど出たマインダーとの会話を聞くのも、なかなか面白いですよ。

プロフィール

%e9%bb%92%e5%b1%b1黒山 健一
Kenichi Kuroyama
出身地:兵庫県
生年月日:1978年7月24日
所属チーム:YAMAHA FACTORY RACING TEAM
全日本トライアル選手権・IAスーパー

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