箱根駅伝3連覇!青学駅伝チームの強さの秘訣に迫る! Interview 原晋×中野ジェームズ修一

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箱根駅伝3連覇、大学駅伝3冠(出雲駅伝、全日本駅伝、箱根駅伝)という偉業を達成した青山学院大学体育会陸上競技部。箱根駅伝の出場すら叶わなかった弱小校を、わずか10年で最強のチームへと成長させた原晋監督と、フィジカルトレーナーとして青学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当する中野ジェームズ修一氏に、指導の秘訣や今後の陸上界について話を聞いた。

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努力を止めた時、夢は終わる

■箱根3連覇、大学駅伝3冠という偉業を達成されました。2004年の就任当時は誰も予想できなかった結果だと思いますが、お気持ちをお聞かせください。
素直に嬉しいですね。就任当時から、駅伝界の勢力図を変えようという気持ちで、退路を断って努力を重ねてきました。これまでの各年の4年生たちに感謝をしたいですね。

■選手を指導する上で、最も大切にしていることは何ですか?
平等感ですね。やはり、自分は見てもらえていないと選手が思ってしまうと、モチベーションは上がりません。ですから、練習場のみならず、寮においても選手とのコミュニケーションを大切にしています。

■今まで指導してきた中で、特に印象に残っている選手、また大会、年などはありますか?
色々ありますが、特に、ということであれば、第91回箱根駅伝初優勝時の5区、神野大地の走りですね。まさに山の神となった、優勝を決定付ける走りでした。

■記録が伸び悩んでいる選手に対して、どのようなアドバイスを送っていますか?また、大会に出られない補欠選手のメンタルケアはどうしていますか?
スポーツの世界はどこもそうですが、どんなに努力しても記録が出ないこともありますし、むしろそういったケースの方が多いくらいです。常に右肩上がりで成長を続けることはできません。しかし、「努力を止めた時、夢は終わるんだよ。今できることを精一杯頑張ろう!」と常日頃から言っています。

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若者にも世界で戦えるイメージを

■ほかのスポーツでも構いません。理想とするチーム、監督はいらっしゃいますか。
2015年のラグビーワールドカップで世界を驚かせた前ラグビー日本代表ヘッドコーチ、エディー・ジョーンズ氏ですね。エディーさんが従来の概念を変えた。言葉では簡単に聞こえますが、相当な覚悟がなければできないこと。だから監督というのはエディーさんのように、しがらみや派閥のない人が適任だと思います。

■陸上界全体でいうと、リオ五輪で短距離が脚光を浴びた一方、長距離は男女ともに苦しんでいます。どのような改革が必要だと思いますか?
本当に、数多くの改革が必要で、これ1つだとは言えませんね。まずは組織内の派閥による馴れ合いをなくすことから始めないといけないと思います。

■トレーニングメソッドを考案した中野ジェームズ修一氏は、原監督にとってどのような存在ですか?
なくてはならない存在です。陸上改革を共に進めていきたいと思っています。日本の陸上界は「マラソン=過酷な練習」との呪縛に捕われすぎている。走る量をこなすことのみがすべてという根性論。昔は“辛抱しろ”が日本の美徳だったかも知れませんが、今はそんな時代ではありません。日本は運動用具、ウエア、サプリメントを含めた栄養面では世界一だと思います。そして国民性も勤勉です。ですが、フィジカル能力だけは劣っています。なのに、いまだに旧態依然の腕立て、腹筋、背筋などの補強トレーニングがはびこる。我々のチームでは中野さんの指導のもと、「青トレ」と呼ばれる独自のトレーニングをやっています。加速力を増すフォームのために何をすべきかを追求し、肩甲骨を大きく動かし、腕の可動域を伸ばす。ジュニア時代から実用的なトレーニングをすることで、効率の良い走りが確立できます。身体能力の高いケニア勢に勝つためには、車で例えるといかに燃費良く、効率の良い走りができるのかが重要です。そのためには「青トレ」が我々独自のものではなく、日本のスタンダードになっていってほしいですね。

■最後に、今後の目標を教えてください。
若者がマラソンにチャレンジできる流れを作っていきたいですね。昨年に引き続き、今年も我が青学から東京マラソンに下田裕太、中村祐紀、静岡マラソンに小田俊平、びわ湖毎日マラソンに一色恭志らが出場予定です。フルマラソンをやるのは経験を積んだ20代後半の実業団選手という既成概念を打ち破り、若いうちから選手自身が世界で戦えるイメージを持てるようにしたいですね。

プロフィール

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原 晋
Susumu Hara
1967年3月8日生まれ 広島県出身
広島県立世羅高校では全国高校駅伝準優勝。中京大学を経て、89年に中国電力陸上競技部に入部したものの、怪我もあり5年で選手生活を終え、営業マンとして活躍した。2004年から青山学院大学陸上競技部長距離ブロックの監督に就任し、15年に箱根駅伝で初優勝、今季は“3冠3連覇”の偉業を成し遂げた。

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最大公約数的なプログラムのストレス

■学生、駅伝を教えることの難しさは感じましたか?
一番大変なのは、50人弱の選手たちを見なければいけないところですね。準備運動一つとっても、本来ならばその人の走り方によって変わってくるのですが、大学の中での集団スポーツ、また教育の一環として、最大公約数的なプログラムを考える必要がありました。つまり、中にはプラスにならない子もいるかもしれませんが、誰もがマイナスにはならないトレーニング。それはトレーナーにとってすごくストレスなんですね。ある選手に、この準備運動は必要ないと思いながらも、一方の選手には必要だから、やらせなければいけない。そしてやっと最適解のトレーニングができたと思ったら、上の選手たちが卒業して、まったくゼロの子たちが入ってくるので、また1から教えなければいけません。その場合、上級生たちに合わせるのではなく、1年生に教えることを、全員を対象に聞かせます。これは原監督の意向でもあるのですが、4年間、1年生が入るたびにずっと同じことを聞かせて、刷り込んでいく。基礎的な部分というのは、徐々に薄れて自分たちの勝手な解釈で変わってくる部分があるので、そこを何回も何回も教えてほしいと原監督も仰っています。これは大学スポーツ特有ですね。

■今まで指導してきた中で、特に印象に残っている選手はいますか?
全員に思い入れがありますが、何人か挙げるのであれば、やはり神野大地はスター選手で、印象に残りますね。他に挙げるならば、我々が見ているGMOアスリーツに橋本崚(りょう)という選手です。彼は青学で指導し始めた最初の1年は故障ばかりで我々もリハビリをサポートして、復帰したい一心でトレーニングを積んで、箱根に選ばれるくらいのレベルになったのですが、最後の箱根で彼は神野のリザーブなんですよ。それでも山登り専用の厳しいトレーニングをひたすら続けて、いつ神野がダメになっても走れるという準備をずっとしてきました。結局、箱根を走ることはできませんでしたが、卒業後にGMOアスリーツに来てくれたことも嬉しいですし、年末の防府読売マラソンで彼は優勝したんです。それがすごく嬉しくて。彼がそこまで成長できたのは、あのリザーブの経験があったからだと思うんですね。青学にはそういう選手がいっぱいいますよ。

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“走らない”フィジカル強化を

■陸上界全体でいうと、リオ五輪で短距離が脚光を浴びた一方、長距離は男女ともに苦しんでいます。どのような改革が必要だと思いますか?
ケニア勢とは骨格も異なれば足の長さも違う。それでも勝っていくということになれば、ものすごく、何かしらの努力をしなければいけないし、“知恵”を使っていかなければいけない。その“知恵”というのが、フィジカルの強化なんですね。どんな環境下であろうと、どんなコースであろうと適応できるだけの圧倒的なフィジカルの高さを作っていかなければなりません。それはものすごくきついトレーニングによって身につくのですが、今まではとにかく走る距離を伸ばすことで補おうとしてきました。しかし、それでは怪我をしてしまう。走らずに圧倒的な筋力と、筋持久力と、心肺持久力を作っていかなければいけないとなったときに、私たちフィジカルトレーナーの出番になるわけです。「走った距離は裏切らない」という言葉がありますけど、私は「走った距離は裏切る」と思っています。走る距離が長ければ長いほど、怪我のリスクは大きくなっていきますので。陸上の選手にはもっとトレーニングをしてほしいですね。

■最後に、著書のPRをお願いします。
前回の『青トレ』第1弾は、ランニング用の体幹トレーニングをどう分かりやすくするかを考えて作りました。第2弾では誰もができる疲労回復法やリカバリーに重点を置いています。正しく体幹トレーニングをできても、疲労が残っていたら、次の日、良いパフォーマンスは出せません。そして疲労が残った状態でまた練習をすると、疲労が蓄積されていってしまう。選手たちには「戦略的リカバリー」という言葉を使うのですが、考えてリカバリーしなさいと。そして習慣にしなさいと。これは市民ランナーの方はもちろん、他のスポーツの選手も応用できます。リカバリーというのは専門家にやってもらうことではなくて、自分でやるもの。セルフコンディショニングを訴えた本になっています。

プロフィール

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中野ジェームズ修一
Shuichi James Nakano
1971年8月20日生まれ 長野県出身
日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナーで、卓球の福原愛選手やバドミントンの藤井瑞希選手など、多くのトップアスリートを顧客に持つ。2014年から青山学院大学陸上競技部の長距離ブロックを指導すると、初年度で箱根駅伝初優勝を成し遂げ、その後の3連覇にも貢献している。

書籍紹介&プレゼント

青トレ 第1弾
青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ

aotore-e1443767326215原 晋/著
中野ジェームズ修一/著
青学駅伝チームが、毎日取り組んでいるコア(体幹)トレーニング&ストレッチの49種を選手と一緒にできる55分のDVD付きで紹介。キレイなフォームで、効率よく、楽に走りたい方にオススメの日本一結果の出ているトレーニング本です。
青トレ 第2弾
青学駅伝チームのスーパーストレッチ&バランスボールトレーニング

プリント原 晋/著
中野ジェームズ修一/著
青学駅伝チームが、毎日取り組んでいる33の披露回復法を53分のDVD付きで紹介、疲れをとりたい、ケガを予防したいランナーはもちろん、毎日のお仕事や家事でお疲れの方々にもオススメの一冊です。今回のインタビューを記念し、原監督と中野氏の直筆サインが入った本書を2名様にプレゼント!応募はこちらから。

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