Interview モリワキMOTULレーシングマネージャー 森脇緑

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2017年、9年ぶりに復活を果たし、鈴鹿8耐へ臨む「MORIWAKI MOTUL RACING」。昨年からは全日本ロードレース選手権JSB1000クラスに挑戦しているモリワキMOTULレーシングの森脇緑マネージャーに、モリワキ復活の経緯や、モータースポーツの魅力について語ってもらった。

機械と人が織り成すドラマ

■モータースポーツの魅力を教えてください。
例えばサッカーでは、ボールを蹴ってゴールに向かいますが、何をするにも体が資本です。一方、4輪を含むモータースポーツは、エンジンがついていて、それを人間が操って走ります。機械と生身の人間が合わさって生まれたスポーツで、選手は機械と対話しながら、サーキットで結果を出します。人だけではなく、機械と人が織り成すドラマ、それがモータースポーツの魅力です。

■モリワキMOTULレーシングの特長について教えてください。
ロードレースに参戦しているチームは、どこも色々な意味で挑戦しているチームです。その中で、モリワキMOTULレーシングはレギュレーションの範囲内でパーツを開発しながら、マシンの性能を最大限に引き出そうと試行錯誤しています。エンジニアたちが常に、新しいものを生み出そうとしています。マシンそのものを作り出しているホンダやヤマハ、カワサキといった大手メーカーさんとは違い、後付けでパーツを組んでいくのですが、そうしたパーツ類をゼロから開発できるところがモリワキMOTULレーシングの特長だと思います。

■三重県鈴鹿市との関わりについて教えてください。
鈴鹿は、モリワキエンジニアリングが生まれた場所です。45年前、鈴鹿市で産声を上げた企業ですので、生まれたときから鈴鹿市に納税をさせていただいています(笑)。鈴鹿はホンダのお膝元ということもありますが、モータースポーツに理解がある市民の方が多く、普通に街を歩いていても「緑さんですか?」と声をかけられます。12年前に『モータースポーツ推進都市』と宣言されましたし、やはり一般の街と違いますね。ですのでモータースポーツ関係者が集まってきて、関連企業さんが根付いています。色々な加工、溶接、板金屋さんだったり、レース用の部品を開発しようとしたときに、協力企業が多い。すごくモノ作りに長けている地域だと思います。

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大事なのは心・技・体

■高橋裕紀選手の印象についてはいかがですか。
彼と仕事で関わるようになったのは2011年、彼がモリワキのシャシーを採用するチームに移籍したときですね。ただ、それよりも20年近く前から、高橋選手は国内外でも有名な選手でした。他にも多くのライダーを国内外問わず知っていますが、彼には世界で活躍できるスター性があり、技術もあって、日本人には珍しいタイプ。仕事上の関係性があってもなくても、彼をサポートするのではなく、横に寄り添うようなかたちで、寄りかかれるような存在でありたいと思っています。

■引退を考えていた高橋選手の考えを変えたそうですが?
高橋選手は私に喝を入れられた(※対談参照)と言っていましたが、そんなことはありません(笑)。2011年は彼にとって苦しいシーズンで、精も根も尽き果ててしまっていました。彼と食事をする中で、引退を考えていることを聞かされたとき、彼に問うたのは「29年間、どんな気持ちでモータースポーツをやってきたのか、もう一度考えてみなさい」と。ライダーは命を懸けて走っていて、「300kmで走りたい」と思っていない人は走ってはいけません。走りたくないのに走っていては、最終的には命を落とします。「これだけ長くやってきたのだから、今日辞めるのも、明日辞めるのも変わらない。もう一度考えてみて」と言ったら、「考えてみます」と言ってその日は終わって、後日、本人から連絡があり、「あなたが走るならモリワキレーシングを復活させます。私たちも一緒になって頑張るから」と言いました。

■緑さんが、仕事をする上で大切にしていることは何ですか?
私が何かプロジェクトを始めるときには、絶対に結果を出すことを考えます。どのスポーツでも大切なのは変わらないと思っていまして、それは『心・技・体』。何のためにそのプロジェクトを推進するのかを理解していないと、道がブレ、誘惑に負けてしまいます。ブレないためには「心」が必要で、「技」は車両を作る技術であり、ライダーの技術でもあり、それをマネジメントする技術です。そして「体」は持久力、体力、すなわち気力、筋力。これはライダーだけではなく、そこで働く人の体力も示しており、その根幹を大事にしていれば、何か問題が起きたときに、今すぐに解決できなくても、いつ解決できるかの判断ができます。慌てると失敗を繰り返すだけですから、どんな苦境に陥っても慌てないことが大事です。

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観れば絶対に伝わるモノがある

■8耐で復活するに至った経緯を教えてください。
彼と一緒にモリワキレーシングを復活させようとしたときから、鈴鹿8耐は視野に入れていました。まずは彼が今まで乗り慣れているクラス、全日本ロードレース選手権のJ-GP2クラスで2年連続チャンピオンになり、結果を出しました。ただ、8耐も国内でレースをするなら通らなければいけない道です。そして2016年からJSB1000クラスに参戦しました。周りからは「出てください」とずっと言われていましたが、JSB1000クラスで勝つに至るデータが不足していました。私たちは参戦するだけのレースはしたくないので、出るからには勝ちにいきたい。どこが弱く、強いかを見定めて、タイヤメーカーをイタリアのメーカーに変えるなど、動いていったわけです。

■8耐への意気込みをお願いします。
もちろん優勝です。難しいことは分かっていますが、できない理由を探し始めたら、何もできません。できない理由に縛られず、1人でもそこを目指す意識を持つ必要があります。その結果、優勝できなかったとしても、そこから得られるものは非常に大きいと思います。ただ、口で言うだけではなく、本当に狙う。本気で優勝を狙っても、どんなに努力していても、結果を出せなければ文句をいわれる非常に残酷な世界です。優勝できなかったとき、その瞬間は悔しいですが、そのミスを次のレースに生かせるかどうかが大事です。

■最後に、読者にメッセージをお願いします。
鈴鹿8耐は真夏の祭典といわれる、世界耐久レースの中でも素晴らしい最高峰の舞台です。バイクの音がうるさい、何が面白いのか分からないと思う方もいるかもしれませんが、そこにいるライダー、関係者が真剣に取り組んでいる気迫など、観れば絶対に伝わるモノがあるはずです。サーキットは本来、遠いところにありますが、鈴鹿サーキットは電車もありますし、遊園地や宿泊施設もありますので、ぜひ観に来てください。

プロフィール

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森脇 緑 Midori Moriwaki
三重県鈴鹿市出身
株式会社モリワキエンジニアリング取締役
20歳の時、父が代表を務める「モリワキエンジニアリング」へ入社。国内外営業及び、レースマネージメント業務を行う。全日本選手権は元より、世界最高峰二輪車レース“MotoGP”のMotoGPクラス・Moto2クラスへの参戦、モリワキが設計・開発・販売を行いモータースポーツ普及活動を主な目的として制作したMORIWAKI MD250を国内外に販売し、世界各国でのジュニアカップを普及させる活動等、様々なアプローチで業界発展の為に活動を行っている。

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