女子アスリート対談 石井寛子×竹内智香

5月12日(土)から15日(火)にかけて、東京オーヴァル京王閣にて『京王閣競輪 開設69周年記念 ゴールドカップレースGⅢ』が行われる。この開催を記念し、京王閣所属のガールズケイリン2017年度賞金女王・石井寛子と、ソチ五輪銀メダリストの竹内智香が対談!石井が密かに憧れていたという竹内との初対談は、笑顔の絶えない和やかな雰囲気のまま行われた。

憧れの存在との出会い

■竹内選手が競技を始めたキッカケは、長野五輪だったそうですね。
竹内:父親が乗馬の障害の選手、母親は馬場馬術をやっており、父親は五輪を目指していましたが、出られませんでした。その夢を継いで、子供の誰かに出て欲しかったようです。なので五輪に出たいという想いから、どのスポーツを選ぶか、という逆算になったのですが、それが長野五輪で観たスノーボードでした。

■しかし、当初は親からの反対もあったとか?
竹内:基本的に、進路にしてもやりたいことにしても、口を挟まれることはまったくない家でしたし、勉強しなさいと言われたこともなかったです。やりたいことは何でもやらせてくれました。ただ、北海道でスキーヤーとしてコースに行くと、当時だらしない格好をしていて、平気でコース上に座り込むスノーボーダーが邪魔でしたし、良いイメージはあまりなくて。「やりたい」って言ったときも最初は良い顔はしなかったんですけど、一緒にスノーボードキャンプに行ったときに、アルペン競技とフリースタイル競技の両方を観て、「アルペンなら…」ということでボードを買ってもらいました。

■石井選手も、競技を始めたキッカケを教えてください。
石井:高校1年生から自転車競技を始めていて、2012年からガールズケイリンが復活することになり、やっていたことが仕事になるならと、そのままこの道に進みました。ちょうど良いタイミングでした。女子の自転車競技はマイナーすぎたので、ほとんど他の競技からの転向でしたが、私はずっと自転車でした。

■お互いの競技の印象について、教えてください。
竹内:自転車は、トレーニングの一環でよくやります。ロードバイクやインターバルトレーニング…自転車がトレーニングの大半を占めています。あの苦しさは何にも代えられないですね。特にインターバルは吐くようなトレーニングになるので。それを仕事としてやっているのがすごいと思います。私たちは、あの苦しいトレーニングをすることで、冬に綺麗な山に行って、スタートから滑る。つまり楽になるわけで。楽にするために夏、頑張るという感じなのですが、傍から観ていると、トレーニングもつらい、レースもつらい、楽しい!って思えるポイントがすぐには思いつかない気もしています。
石井:私は雪なし県だったので、スノーボードを滑ったことがありません。小学校でスキーを1回やったくらいですね。全然滑れませんでしたが。実は私、竹内さんのことが大好きで、何回かお会いしているんです。
竹内:Jiss(国立スポーツ科学センター)ですか?
石井:そうです!良かった!嬉しい!
竹内:私いつも文句いってましたもんね。トレーニングしながら「こんなことやって意味あるのかな」って(笑)。
石井:でもお会いする前から好きだったんですよ。テレビを観ていて、ソチ五輪でメダルを獲ったとき「格好良いなー」と思っていました。その人がJissにいたんです(笑)。竹内さんを教えているコーチが、一回私についたときに色々聞いたのですが、本当に吐くような練習を何本もこなしていて、400mトラックも何本も走れると聞いて、やはり格好良いなと。でも一番印象に残っているのが、“ハッピーターン”を食べるっていう(笑)。最初聞いたとき、「えー!?」と驚きました。
竹内:そうそう!走る前に食べるんです。
石井:だから私も、それだけは真似して食べています(笑)。

平昌を経験して、ソチのメダルの価値に気づいた

■オフシーズンのトレーニングについて教えてください。
竹内:週2~3回のインターバルトレーニングを中心に、シーズンが近づくにつれて競技に近い状態で行います。冬に向けて、10本滑っても疲れないような身体を作っていく。実は、ソチ五輪まではトレーニングが大嫌いでした。今も嫌いですけど(笑)。ずっとセンスで勝てると信じ込んでいて。努力は必要ないと。今考えるとすごいことをいってるなと思うのですけど、そういう考え方をしていました。でもソチ前年のプレ五輪で標高も高くてコースもすごく長くて全然滑れませんでした。フラフラで立てなくて、これはもうトレーニングしなければと思ってするようになりました。おかげで、今まで4~5本でダウンしていたのが10本楽に滑れるようになり、トレーニングって大事なんだなと痛感しましたね。自転車のインターバルが、初めてトレーニングの必要性を教えてくれました。

■それぞれ、思い出のレースや大会はありますか。
竹内:初めて表彰台に上がった大会、初めて勝った大会も思い出に残っているのですが、やはりソチ五輪の銀メダルというのはみんながすごく喜んでくれて、自分が歩んできた競技人生に一つの証が残った、すごく良い大会だったと思います。また、それとは別に平昌五輪は目指していたものが獲れなくて、でも平昌五輪があったから、ソチ五輪のメダルの価値に気づくことができました。今まで、ソチのメダルまで4大会を必要としていたのですが、環境さえ整えば獲れるとか、メダルを獲ることに対してそれほど難しく感じていませんでした。そして今回、初めて4年間、金メダルだけを目指してやってきて、その難しさをすごく感じました。平昌五輪を経験したことで、メダルって実はこんなに難しいことなんだと知ったからこそ、ソチの喜びが倍増しました。平昌を目指していなかったら、たぶんソチのメダルのありがたみや喜びはその程度になってしまっていたと思いますし、平昌でメダルを取れなくて、初めて上から表彰式を見て、羨ましさはあるけれど、ソチのときに同じような気持ちを味わった選手がいたんだと気づかされました。32人で出場するのですが、29人はこんな気持ちだったんだなと。競い合って高め合えるライバルたちがいること。そうやってスポーツって成立しているんだと気づかされたという意味では、平昌は選手として価値のある大会だったなと思います。
石井:私は、やはり去年の年末のガールズグランプリですね。5年連続で出ていて、4年間は出られて良かったと、出場するだけでホッとしていました。でも4年目に4着だったときに、絶対に来年は優勝すると決めて、1年間練習してきました。2017年のグランプリ優勝しか1年間の目標を立てず、6月からトレーナーさんとかを変えて、年末に勝つためにずっとやってきて、ようやく勝つことができました。やはり勝ちたいと思わないと無理ですね。本当に最初の4年間は、賞金上位7人に入ること自体が相当難しく、連続出場も難しいことなので、出場するだけで満足していた自分がいたのですが、今はコンディションをピークに持っていけば勝てることが分かったので良かったです。
竹内:面白そう。観に行きたい!いつですか?
石井:ぜひ来てください!グランプリは年末の30日、今年は静岡競輪場でやります。

■ウィンタースポーツにとって、やはり五輪は特別な舞台ですか?
竹内:日本人選手は特に、クリスタルトロフィーという年間のワールドカップチャンピオンが一番で、五輪はその次という感覚を持った選手がすごく多くて、私もずっとそういうものだと思っていました。でもヨーロッパの選手と仲良くなればなるほど、ヨーロッパの選手たちも結局、五輪が一番なんだなというのはこの10年、すごく感じています。やはりみんな五輪に出るために予選に挑んで、各国4人しか出られない中、そこに上がってきていますから、そこに懸ける想いというのはやはり独特なものを感じますし、私は誰よりも五輪ありきでスポーツを始めています。五輪に出たいという目的からスポーツを選んで始めたので、五輪がすべてですし、五輪なしではここまで頑張れなかったでしょうね。
石井:私も五輪を目指して大学1年生のときにナショナルチームに入り、30歳までトレーニングしていました。ただ、あまりタイムが出ず、ガールズケイリンとの両立も難しくて、2年間くらい低迷してしまいました。Jissにも通っていましたが、色々あって疲れてしまって。今のナショナルの選手は逆にほとんどケイリンには出ず、海外のレースに行っています。
竹内:次は東京五輪だから出たくないですか?
石井:五輪は難しいですが、パラリンピックもあるので、正直そちらの方が興味があります。タンデム競技といって、目の見えない人を後ろに乗せて、健常者が前で2人で漕ぐんです。同じガールズケイリンの田中まいちゃんが銀メダルを獲っているので、私も本気で狙ってみようかなと思っています。

もっとメジャーにしていきたい

■お二人の今後について聞かせてください。
竹内:引退の発表もしていないですし、まだ決めてもいません。平昌五輪で辞めると決めていたし、終わった直後も「もうないな」と思っていたのですが、帰国すると周りの方が次に向かっていて(苦笑)。スノーボードはやはりマイナースポーツで、競技を続けること自体がすごく難しかったので、今は手放しで続けられる環境がある。応援団も多くなって、支援してくださる方たちが増える中で、辞めるのはもったいないなと思っていることも正直なところです。それでも、そう簡単に続けようと思う気力もありません。今は帰国して1ヶ月くらい経ちますが、挨拶回りばかりでなかなか自分一人の時間がないので、今日で一区切りつきますから、これからゆっくりと考えて決めようかなと思います。
石井:3月に大きいレースが一つ終わって、失敗もしてしまいましたが、やはりガールズグランプリには絶対に出場したい。目標としては、“連覇”ですかね。まだ誰も成し遂げていませんから。

■最後に、読者へのメッセージをお願いします。
竹内:私たちは、五輪スポーツで生きている立場です。アマチュアスポーツなので、日本の風習として、五輪だけ熱くなって、すぐに冷めてしまうことをすごく感じています。そこが野球とかサッカーとは違うのかなと思いますね。逆に競泳とか、すごく強くてトップに居続ければ、普段の日本選手権とか色々な大会から興味を持ってくれるので、五輪だけではなくて、色々なところに目を向けて色々なスポーツを幅広く見てもらえたら嬉しいです。
石井:本場に来て、たくさんのお客様に見てもらいたいです。京王閣でレースだったときに、「ひろこー!」ってすごく応援してもらえました。そうしたエネルギーが全国各地であったらいいなと。ガールズケイリンをもっともっとメジャーにしていきたいです。

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