COUNTDOWN TOKYO 2020 vol.7 スポーツクライミング -SPORTS CLIMBING-

2020年、東京に再びスポーツの祭典がやってくる。Spopreでは「COUNTDOWN TOKYO 2020」と題し、2020年6月1日発行号まで全33競技を毎号特集。カウントダウン連載企画で世界最大のイベントを盛り上げていく。

五輪では「複合」で競い合う

東京五輪で初採用となった新競技「スポーツクライミング」は、同じ条件で設置された高さ15mの壁を2人の選手が同時に登り速さを競う「スピード」、高さ4mの壁を制限時間内にいくつ登れるかを競う「ボルダリング」、制限時間内に高さ12m以上の壁のどの地点まで登れるかを競う「リード」の3種目があり、五輪ではこれら3種目を1人の選手がこなす「複合」で競われることとなる。

3種目は本来別々に行われているため、それぞれのスペシャリストはいるものの、すべてにおいて満点という選手はまだいない。また、短時間で3種目をこなすことになるため、これまで以上に体力を消耗する競技となっている。

2017年7月にシンガポールで開催されたアジアユース選手権で初めて複合の競技会が行われ、日本では2018年6月、岩手県盛岡市で複合初の国内大会『複合ジャパンカップ』が開催。男子では楢崎智亜、女子では野口啓代(ともにTEAM au)が初代王者に輝いたが、出場した選手は口を揃えて体力的な難しさを語っていた。

スピード、ボルダリング、リードの順番で競技がなされ、それぞれの種目の順位を掛け算し、結果の数字の小ささで成績が決まる複合では、苦手種目で順位を落とさず、得意種目で上位を狙えるような選手でなければ、メダル獲得を夢見ることはできない。歴史の浅い競技形式だけに、強化方法も確立されていない中で、複合の大会自体も少ないが、日本は早めの対策でメダルを見据える。

世界と渡り合えるボルダリング

それぞれの競技に目を当てると、日本の得意不得意が見えてくる。まずは登り切った回数を競うボルダリング。ボルダリングはロープを付けない種類のフリークライミングで、スポーツクライミングの場合は高さ4~5m程度の壁において4~8手ほどのコースを登る。ボルダーは定められたスタート位置から始めて、トップホールドを両手で触り安定した姿勢を取ると「完登」とみなされ、この完登の回数と、完登までの「アテンプト数=トライの数」によって順位が決まる。

ボルダリングの壁には、指先しかかからない小さなものから、両手でも抱えきれないホールドが設定されており、次のホールドには左右のどちらの足をかけるか、そのとき手はどこをつかむか、制限時間内に自分の能力を考えながら登る必要がある。

また、競技前にはオブザベーション(観察)の時間があり、登る前にコースを観察しながら、どのようなルートで登っていくかを各自シミュレート。その分析力が、省エネでの完登、すなわち体力の温存にもつながっていく。

こうした頭脳的な要素もあるため、日本人も世界のトップと戦える種目であり、実際に日本はボルダリングW杯の国別ランキングで4年連続1位。男女ともに頂点を狙える若手選手を揃えており、3種目の中で最も選手層の厚い種目となっている。

最も高い壁を登るリード
日本が苦手意識を持つスピード

リードは、高さ12m以上の壁、最大60手程度のコースをロープ付きで登る種目で、スポーツクライミングの中で最も古い歴史を持つ。途中の確保支点にロープをかけることで安全を確保しながら登り、最後の支点にロープをかけると完登と見なされる。3種目の中で最も長い距離を登る種目であり、持久力が問われる種目でもある。登った高度が同じだった場合は、より早いスピードで登った選手が上位となる。ただしボルダリングとは異なり、途中で落ちた場合はそこが記録となり、再トライをすることはできない。慎重に、かつ大胆に、力強く登らなければ、完登は難しい。それでも、日本は昨年のW杯国別ランキングで3位と、上位に食い込む実力者を擁している。複合では3種目のうち最後に行われる種目のため、リードまでにいかに体力が残っているかがメダルを狙う上では重要になってくるだろう。

そして3種目の中で最も日本が成長しなければならないのがスピード。その名の通り、高さ10mもしくは15mの壁で、予めホールドの配置が周知されているコースをどれだけ早く登るかを競う種目。陸上でいう短距離走であり、ルートが事前に周知されているためにコース取りなどの頭脳戦は一切不要で、純粋に筋力と瞬発力のみで登頂を目指す。

日本では6月の複合大会で楢崎智亜が出した「6秒87」が日本記録だが、世界のトップレベルは5秒台を叩き出している。女子も世界のトップとは大きくタイムが離されており、昨年11月には日本山岳・スポーツクライミング協会が強化プロジェクトを立ち上げた。残り2年、メダル獲得に少しでも近づくため、日本に必要なのは得意種目の強化はもちろん、苦手種目の克服が一番の課題になるかもしれない。

●公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会
HP:https://www.jma-sangaku.or.jp

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