JAF presents 異種競技対談 中嶋一貴×五郎丸歩

全日本スーパーフォーミュラ選手権最終戦、『第17回JAF鈴鹿グランプリ』が、10月26~28日にかけて鈴鹿サーキットで開催される。この開催を記念し、スペシャルな異種競技対談が実現。スーパーフォーミュラ参戦ドライバーの一人であり、ル・マン24優勝ドライバーでもある中嶋一貴と、ラグビーブームの火付け役でフランスの名門トゥーロンでプレーもしていた五郎丸歩が初めて顔を合わせた。

観る側のレベルが試される競技

■お互いの印象、また競技の印象を教えてください。
中嶋:やはりテレビで観ていたイメージが強いですね。「うわ、本物だ」という感じです(笑)。普段、あまり自分の年齢を気にしないのですが、今日、僕の方が年上ということを聞かされて、意外と自分の年齢、上なんだなと改めて感じさせられました。ラグビーの印象については昔、イギリスにいた頃に一度、生で観たことがあります。プレーの激しさはもちろんでしたが、一番印象的だったのは観客でした。サッカーはホームとアウェーが完全に分かれていて、過激なサポーターが隣同士だと危ない感じになってしまうでしょう。でも僕が観たのはイングランドとウェールズの試合でしたが、右隣にイングランドのサポーター、左隣にウェールズのサポーターがいて、もちろん試合中は野次を飛ばしながら観ていますが、試合が終わったら選手だけではなくて、サポーターも相手を労ったり談笑したりしている。“ノーサイド”ってそういうことなんだというのが理解できて、すごく印象に残っています。
五郎丸:世界で活躍されていますし、レースというのは非日常というか、普通の人が入っていきたくても入っていけない領域で戦っていますよね。僕も車の運転は好きなので、憧れる部分はあります。あれだけのスピードを出して順位を競い合う…未知の領域に行かれているなと感じます。レース観戦については、F1は観ていましたし、フランスにいたときにはニースやモナコが近かったので、遊びに行きました。

■ご自身の競技の魅力を教えてください。
中嶋:五郎丸さんに言ってもらいましたが、非日常的な部分でしょうか。なかなか口で魅力を説明するのは難しいのですが、車の速さもそうですし、音だったり、トータル含めて魅力なのかなと思います。ただ、スピードや音なんかはテレビで観ていても分かることで、生で観戦することの一番の魅力は、非日常の空間を味わえることという気はします。
五郎丸:ラグビーはもう生身でぶつかり合うスポーツですし、15人対15人で戦うスポーツ。球技の中では一番、グラウンドに立っている人数が多い競技です。力勝負もありますけど、戦略的要素が含まれている面白いスポーツですね。
中嶋:観る側のレベルも試されますよね。そこは少しレースも共通する部分があるかもしれない。戦略的なところは、知っていないと普段観ている人も分からないですから。

■ル・マン24に懸けた想い、また優勝したときの気持ちを改めて振り返ってください。
中嶋:自分自身も7回目の挑戦で、トヨタ自体は30年以上前からやってきました。ずっと続けているわけではなくて間は空いていますけど、今回がちょうど20回目の挑戦。やっては跳ね返され、5分前にリタイアしたこともありましたし、なかなか厳しい想いもしてきましたけど、そういう経験があって、ここまで続けてきたからこそ、今年の結果があると思っています。ただ今年は本当に、勝たないとちょっとこの先、どうなってしまうか分からない。そんなプレッシャーがある中でのレースだったので、勝った上で思った気持ちとしては「ホッとした」ことの方が強かったです。嬉しさよりも、ホッとしたんです。嬉しさが沸いてくる前に、もう次のレースがあって、実感せずに今に至っています(笑)。

■五郎丸選手もフランスでプレーしましたが、どんな経験でしたか。
五郎丸:まずヨーロッパのプロリーグでプレーした日本人が誰一人いなかったということで、未知の世界でしたけど、まずは日本人として第一歩を踏み出さないとその先もないということで決断しました。(チームメイトとの)壁があるということは分かっていましたし、トゥーロンというチームはサッカーでいえばレアル・マドリードみたいな、世界のスーパースターたちが集まっているようなチーム。もちろんプレーヤーとしての魅力というか、大きな壁は感じましたけど、それ以上に人間力というか、コミュニケーション能力の高さ。そういったところを観られたのは自分の中ですごく大きかった。競技力を求めてずっとやってきましたけども、最終的にたどり着かなければいけないところというのは人間力、コミュニケーション能力なんだなと。それを改めて認識させてくれて、非常に良い経験でしたね。
中嶋:ル・マン24は外国人だらけで、チームメイトも今年はスペイン人、エンジニアはポーランド人とオランダ人、メカニックはドイツ人とフランス人…国際色豊かという意味ではすごく共通するところがあると思います。ただ、ラグビーは選手一人ひとりがライバルでもある。僕らはみんなで一緒にやっていく。だから輪に入っていくことに対する壁は少ないのではないでしょうか。ただ、F1に参戦していたときもそうですけど、海外に行くことで自分自身も人間の幅が広がると思います。日本では起こらないことが平気で起こりますし、そういう色々な経験を経て、仕事のやり方、周りのレベルも高い中で、様々な部分で成長できることがあります。

■海外でのスポーツ文化について、日本との違いは感じましたか。
五郎丸:リスペクトのされ方が全く違います。レースの世界もそうだと思いますよ。国内で走るのと、海外で走るのとは捉えられ方も違いますし、接し方も全く違うと思います。
中嶋:それはありますね。入国の際にも「何をしている人?」と聞かれるところで、「レースをやっている」というと、それだけでまともな職業だと分かってもらえます。レース自体、海外の方が知名度が高く、歴史があって続いてきているものなので、仕方ない部分ではありますけれど。日本ではどうしても、パッと一瞬盛り上がって、ブームが去っての繰り返しになってしまう。レースも昔、そういう時期がありましたし、そうならないように、地道に頑張らなければいけないと思っています。

鈴鹿で結果を残したい
W杯に向けて国内盛り上げたい

■中嶋選手にとって、レース前に行う“ルーティーン”はありますか。
中嶋:昔はやっていたこともありました。プレッシャーのかかるレースで、順序を決めてやっていましたけど、経験を重ねる毎に、そういうことを意識しなくても自分の中でスイッチを入れられるようになりました。絶対に毎回、そのルーティーンができるとは限らないですし、特に耐久レースはいきなり自分の出番が来る状況もあり得るので、こだわらないようにしています。

■ルーティーンといえば五郎丸選手ですが、今はキックのときにあの動きはされていませんね。
五郎丸:そうですね。面倒臭いから止めたわけではありません。自分の中で、キック成功率85%を出したいと思っていて、チームからもそれを求められていました。結局、その数字が出なかったので、何かを変えなければいけない。よりキックまでの動作をシンプルにしたら、昨シーズンは82%という数字が出たので、今は残りの3%を追い求めています。練習も数をこなせば良いというわけではなく、若い頃はそれでも良かったかもしれませんが、それでは体のバランスが崩れてきてしまう。僕は決められた8箇所のポイントから順番に蹴っていき、早ければ8本でトレーニングが終わります。それを毎日続ける。一度のトレーニングで詰め込み過ぎてしまうよりは、毎日少しずつやっていった方が、修正もしやすいので。
中嶋:あれは蹴った瞬間、入ったかどうか分かりますか?
五郎丸:分かりますね。足に当たった感覚で、外れたなと。
中嶋:聞いていて、すごくゴルフに近いなと思いました。止まったボールに対して、自分でタイミングを決めて打つ。ゴルフみたいな競技は、ルーティーンが大事なんだと思いますね。レースは受身なところがあって、起こったことに対応していく能力が必要になってくる。自分ですべて動作から決めて、全部自分でっていうのは難しさがあるんだろうな。外したらどうしようとか、ナーバスになることはありませんか?
五郎丸:キックの瞬間はラグビーで唯一、自分の世界が作れる時間です。ほかの誰も関われないので、集中して、ナーバスなことは一切考えません。自分でコントロールできる歩数や間合いにフォーカスするので、入る入らないにフォーカスはしませんね。決めるために、自分なりに準備して蹴るわけで、決めるためのことをすべてやった末に、外れたら仕方ないなと。外れたからといって、あまり引きずらないようにしています。

■最後に、中嶋選手は10月のJAFグランプリに向けて、五郎丸選手は開幕したトップリーグに向けての意気込みをお願いします。
中嶋:スーパーフォーミュラに関しては、今年は本当にダメダメなので、何をやっても引っかからない。たまたまそれなりに結果が出たレースもありましたけど、チームもドライバーもパフォーマンスとしてはかなり苦戦していますし、決して良いシーズンとはいえません。その分、最後のレースでしっかりとキッカケを見つけて、見つけるだけではなくてちゃんと結果を残して終わりたいという気持ちは強いです。クルマ自体も今年のクルマは今年で終わりなので、来年のクルマに期待する気持ちもありつつ、ここまでやってきたクルマの集大成なので、鈴鹿は地元が近いところでもありますし、何とか結果を出したいと思います。
五郎丸:個人としては85%という数字を達成して現役を終わりたいなという想いがありますので、1年、1年チャレンジしていきます。またラグビー界としては来年、ラグビーワールドカップが日本にやってきますので、トップリーグをまずしっかりと盛り上げていきたい。あとはこうして対談させていただいたので、ラグビーファンもぜひ、スーパーフォーミュラのレースに行ってほしいという想いもあるし、レースファンもラグビー場に足を運んでほしいと思います。
中嶋:ワールドカップが始まった頃には、にわかファンじゃなくなっているように、自分自身もラグビーを注目して観ていきたいと思います。

プロフィール

中嶋 一貴
Kazuki Nakajima
生年月日:1985年1月11日
身長/体重:175cm/65kg
血液型:A型
出身地:愛知県
所属: VANTELIN TEAM TOM’S #36(SUPER FORMULA)
LEXUS TEAM au TOM’S #36(SUPER GT)
TOYOTA GAZOO Racing(WEC)

五郎丸 歩
Ayumu Goromaru
生年月日:1986年3月1日
身長/体重:185cm/100kg
血液型:B型
出身地:福岡県
ポジション:FB(フルバック)
所属:ヤマハ発動機ジュビロ

第17回JAF鈴鹿グランプリ

SF公式サイト:https://www.suzukacircuit.jp/superformula
JAFモータースポーツ:http://jaf-sports.jp

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