COUNTDOWN TOKYO 2020 vol.12 フェンシング -FENCING-

2020年、東京に再びスポーツの祭典がやってくる。Spopreでは「COUNTDOWN TOKYO 2020」と題し、2020年6月1日発行号まで全33競技を毎号特集。カウントダウン連載企画で世界最大のイベントを盛り上げていく。

太田雄貴会長の改革

いよいよ来年に迫った東京五輪に向けて、各競技団体が競技の魅力をアピールする機会が増えている中、劇的な変化で注目を集めている競技がフェンシングだ。
五輪2大会連続銀メダル、世界選手権で金メダルを獲得するなどスター選手だった太田雄貴が2017年、32歳にして公益社団法人日本フェンシング協会の会長に就任。自身の知名度を生かした広報活動はもちろん、これまでにない発想で大会の演出や制度を改革していき、2017年の全日本フェンシング選手権大会では前年比500%以上という驚異の集客増に成功している。

日本で剣道や柔道、空手道といった日本伝統の武術がスポーツとして昇華されてきたように、フェンシングとは元来、騎士の剣術であり、西洋文化の伝統でもある。こうした伝統は、どうしても固定観念が生まれやすく、良くも悪くも変わることがない。そんな背景がある中で、リスクを恐れずに改革を推し進めている太田会長の意思の強さ、実行力はバスケットボール界を再生させた川淵三郎を髣髴とさせる。フェンシング界もまた、太田会長の固定観念にとらわれない柔軟な発想によって生まれ変わろうとしているのだ。

剣術として、スポーツとして

中世の騎士による剣術は、鎧や盾などの防具、そして火器の発達によって実用性が急速に衰退してしまう。しかし、剣は騎士の名誉の象徴であり、戦場での需要がなくなっても上流階級の嗜みとして競技化される。そして1750年、金網のマスクが開発されたことで危険性が大幅に緩和されると、ヨーロッパ各地で盛んに競技会が開催されるようになっていった。

近代五輪では、第1回のアテネ大会から毎大会、正式種目として採用されているが、当初は競技方法やルール等がまちまちだった。このため、1914年にパリで開催されたIOC国際会議で統一的な「競技規則」が採用され、見解の相違等による論争やトラブルが収束。前年1913年に設立された国際フェンシング連盟(FIE)の規則書の原案にもなるなど、競技の国際性を確立する上で大きく貢献した。フェンシングの種目名や用語がフランス語なのはこのためである。

日本には1884年、陸軍戸山学校においてフランス人教官により片手軍刀術として伝えられた。スポーツとしてのフェンシングは1935年、フランス留学から帰国した岩倉具清が「日本フェンシング倶楽部」を設立。これを受け、同年に法政大学がフェンシング部を創部し、翌年には慶應義塾大学が創部した。

さらにその年、ベルリン五輪の総会で次期開催地が東京に決定し、大日本フェンシング協会(現・日本フェンシング協会)が発足。フェンシングが競技種目に採用されたこともあって各大学でフェンシング部創設が相次いだが、1940年の東京五輪は戦争により中止となってしまった。

日本が初めて五輪のフェンシング競技に参加したのは1960年のローマ大会。1964年の東京大会で男子フルーレ団体4位入賞が長らく最高成績だったが、2008年の北京五輪男子フルーレ個人で太田雄貴が銀メダルを獲得し、ついに日本フェンシング界初のオリンピックメダリストが誕生した。

武器もルールも異なる3種目

フェンシングでは「フルーレ」、「エペ」、「サーブル」の3種の武器があり、これらがそのまま種目名となっている。

フルーレは、3種目の中で最も剣が軽く、得点範囲は胴体となっており、突きのみが有効で得点となる。先に攻撃したほうが優先権を持つ「攻撃権」があり、攻撃権を持たない防御側はまず自分を守らなければならず、パラード(相手の剣を払うこと)によって攻撃権が防御側に移る。

エペは、フルーレよりも重量がある剣で、手、足、頭や下半身含め全身どこを突いても得点となる。3種目の中で唯一、攻撃権の概念がなく、同時突き(相打ち)が有効のため、防御的で慎重な試合になる傾向が多い。

サーブルは、頭、腕を含む上半身が得点範囲で、突きだけでなく斬りも有効となる。五輪では長らく男子のみの種目であり、女子も採用されたのは2004年のアテネ大会から。ルールは男女とも共通で3種目それぞれに「個人戦」と「団体戦」がある。

フルーレの名手だった太田会長の下、その改革に注目が集まるフェンシング界。今年1月に都内で行われた「JAL Presents2019 高円宮杯 フェンシングワールドカップ東京大会(男子フルーレ個人・団体)」では入場料を無料にし、若き日本人フェンサーたちが注目を浴びる舞台を演出した。FIEの副会長でもある太田会長が繰り出す次なる一手も、また我々を驚かせてくれるに違いない。

公益社団法人日本フェンシング協会
HP:http://fencing-jpn.jp

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