三重県スポーツ対談 ミラ監督(鈴鹿アンリミテッド)×梶原晃監督(三重バイオレットアイリス)

三重県鈴鹿市を本拠地とするサッカークラブ「鈴鹿アンリミテッドFC」を率いるミラグロス・マルティネス・ドミンゲス監督と、同じく鈴鹿市を本拠地とする女子ハンドボールチーム「三重バイオレットアイリス」を率いる梶原晃監督。初の海外挑戦をしているミラ監督と、選手時代にドイツで海外挑戦をしていた梶原監督の、ほぼ同世代による対談が実現した。

サッカーと通じる部分がある

■お互いの競技の印象は?
ミラ:ハンドボールは、スペインでものすごく有名なスポーツの一つです。知名度があり、人気も高い。情熱をかけてやっている盛んなスポーツという印象です。プレーの面でいえば、セットプレーの部分など、サッカーと通じる部分があると感じています。
梶原:僕は小さい頃からサッカーが大好きで、レアル・マドリードのファンです( 笑)。
ミラ:私もです( 笑)。
梶原:僕はハンドボールを選手としても監督としても経験していますが、戦術は半分以上、サッカーから引っ張ってきています。なので、サッカーの試合もよく観ます。
ミラ:やはりサッカーの戦術はハンドボールでも有効なのですか?
梶原:今、トライしている部分ではあるのですが、有効だと思っています。戦術として挑戦したいと思っているのは、ユルゲン・クロップ監督(リヴァプール)のゲーゲンプレス。それから監督としての立ち振る舞い、チームコントロールの部分では、ジネディーヌ・ジダン監督(レアル・マドリード)やカルロ・アンチェロッティ監督(ナポリ)を参考にしています。
ミラ:私は選手としてのジダンが大好きですが、そういったチームコントロールの部分で非常に優れた監督だと思います。ピッチ外でも選手たちのアイドル的な存在なので、掌握できているのでしょう。
梶原:ちょうど今、チームにはハンドボール日本代表のキャプテンや、ハンガリーでプロとしてプレーしていた選手が加入して、彼女たちはキャリアもある分、プライドもあります。東京五輪に向けてアピールしたい選手もおり、チームコントロールの部分は非常に気にかけています。

■では、お互いのチームの印象は?
ミラ:以前、練習試合を観させていただいたとき、攻撃の形がはっきりしていた印象です。日本人的な、スピードや規律正しさがよく表れていました。フィジカル的には、身長が低かったり、ヨーロッパに比べて体格で劣る部分は仕方がないのかなとも思いました。
梶原:今シーズンはまだ、アンリミテッドの試合を観られていないのですが、事務所の前(三重交通G スポーツの杜 鈴鹿)で練習しているので、たまに観たいなと思いながら、事務所に通っています。どんな練習をされているのか、かなり興味があります。
ミラ:練習を観ていただくのは全く問題がないので、ぜひ来てください。日本のやり方とは違った練習をしていると思いますよ。
梶原:ぜひ!教え方や立ち振る舞い、指導方法については色々な競技から勉強しようと思っていますし、特に女性が男性を教えるという部分では非常に興味があります。今年からJFL に上がりましたが、去年までも面白い、話題になるようなことをしているチームだなという印象でした。
ミラ:私も、ほかのチームとは違った要素のあるチームだと感じています。私自身、日本の監督とは異なる距離感を出そうと思っていて、選手と近い距離感を理想としています。
梶原:僕も一緒です。
ミラ:そういう関係性が、最後の局面になったときに、大事になってくると思っています。同じ目的に向かってやっていく中で、目的が共通意識として持てますし、距離が近くにあるのは大事だと思います。
梶原:アンリミテッドには有力な選手も入ってきて、チームとしてすごく良い時期にいると思います。大変だとは思いますが、ヴィアティン三重とやり合いながら、上を目指してほしいですね。同じ県にライバルがいるのは良いことだと思います。

■ミラ監督は女性として男性のチームを、梶原監督は男性として女性のチームを率いています。異性を率いる難しさはありますか?
ミラ:自分が男女の違いで感じるのは、スポーツの面よりも、ロッカールーム、ピッチ外での部分です。女性の方がエゴイストがあり「私は控えなのに、彼女はプレーしている」という問題が女性の方が起こりやすい印象があります。その部分に関しては、男性の方が少なく感じます。ただ、これが男女の差異なのか、日本とスペインの文化の違いなのかはわかりません。ただ、率いることの難しさは感じていません。暑いのだけですね( 笑)。
梶原:確かに、女性の方が自分がはっきりしている分、チームの輪をすごく意識していて、バイオレットが特別なのかはわかりませんが、チームの輪から外れている選手がいると輪に戻そうとします。ちゃんと輪になっていないと、まとまりがなくプレーに影響してしまうんです。
ミラ:スペインも家族、一つのグループを大切にします。一つのまとまりを保とうとして、外れてしまう人を戻そうという部分については、男性よりも女性の方が多いと思います。

失敗は“悪”ではない

■この機会に聞いてみたいことはありますか?

ミラ:ハンドボールのリーグが始まったら、試合を観に行きたいと思いますが、練習も観てみたいです。この練習にどういった意味があるのかとか、ここにサッカーの要素を取り入れましたとか、そういうところが知りたいです。
梶原:ぜひ観に来てください。僕は聞きたいことがたくさんありすぎて…。
ミラ:いいですよ、こういう機会でなくても、今度カフェで( 笑)。
梶原:そうですね( 笑)。じゃあ日本の良い部分、快適さについては良く聞きますが、逆にストレスを感じる部分はありますか?例えば、ドイツは勤勉で規律正しいと言われていますが、実際に行ってみると電車が平気で遅れたり、日本に比べてストレスを感じる部分がありました。
ミラ:確かに、ヨーロッパはそうですね。日本はそこの部分がすごくしっかりしています。その勤勉さや規律正しさは日本の良いところではありますが、反対に悪い部分でもあると思っています。練習でも、言われたことには従うのですが、自分で最後の選択をしなければならないときに良い選択ができない。判断を待っていることが多く、自主性という部分で改善が必要だと感じています。
梶原:僕も同じことを感じています。
ミラ:私は選手たちに選択肢と決定権を与える練習をしています。目的だけ与えて、選択をするのは彼らです。最初は、その選択によってミスをするのですが、何回も間違いを犯すことによって良い選択を見つけることができるようになります。それが試合で、その局面になった時に良い選択を選べるようになるのです。
梶原:日本は教育上、失敗をすることが“悪”とされていて、そこがスポーツにも影響してしまっていると感じます。
ミラ:日本の小さい子供たちへの指導も、仰る通り「間違いを犯さないように」ということを強く言われてしまっています。選択する機会がすごく減っているんですね。スペインの場合は、小さい頃から選択をさせて、失敗を繰り返して育てていくので、成熟した時には良い選択ができる判断を何回も、何千回も迎えています。なので、大人になってから良い選択ができます。日本は教育の面で変えていく必要があると思います。
梶原:スペインでは、ミスに対してどういう対応をしていますか?
ミラ:怒りませんね。スペインでは失敗することに対して悪いイメージがありません。失敗に対してはそれほど追及せず、もちろん規律を守らなければ注意はしますが、日本ほど煩くないと思います。エラーに対して、“怒る”というよりは“修正する”という意識が強いです。日本の指導者は、自分のやり方で結果が出なかったら自分に返ってくるため、選手たちに少し厳しく当たってしまうのかもしれません。
梶原:僕も練習中、選手がミスをしても何も言いません。そうすると面白いもので、選手が不安になるんですね。「なんで怒られないんだろう?」と。スペインでは、そういう感覚はないんだろうと思います。
ミラ:それは面白いですね( 笑)。ヨーロッパの方が、指導者が“教師”に近い立場で、日本の場合は“ボス”のようになってしまっているのかもしれません。エラーした選手がいたとしたら、自分がどうしてミスをしたか、もうわかっています。次に同じシーンが起こった時に、おそらくその選手は何かしらの解決策を準備するはずです。もしそこで怒鳴ってしまったら、彼はその時に考えるのは「次はこうしよう、ああしよう」というより、「怒られてしまった」ということが頭に残ってしまいます。なのでミスを指摘するタイミングについてはすごく考えなければいけません。
梶原:サッカーは必ずミスが起こるスポーツですからね。
ミラ:スポーツはゲームです。勝つか、負けるかの勝負の世界ですが、だいたいが負けてしまいます。リーグでも、優勝できるのは1チームだけで、それ以外のチームは負けてしまう。スポーツとは負けることが多いもの。そこの認識を、改めて考える必要があるのかもしれません。

■梶原さんはドイツでのプレー経験があります。海外でプレーすることの意味を教えてください。


梶原:ハンドボールは父親に教えてもらって始めたのですが、その時にドイツでプロリーグがあることを聞いていました。プロの世界でやってみたいと思いましたが、日本からハンドボールでヨーロッパに行くという前例があまりなく、どうしていいかもわかりませんでした。ならば自分で行くしかないなと思い、知り合いもツテもチームもない状態でドイツに行って、チームを探しました。前例のない道を通したので、次はこの道を人に教えることができます。海外挑戦して良かったと思うことはたくさんあって、一言にするのは難しいですが、人として成長できたと思います。人間性、考え方の違いを知ることができ、同時に日本の良さも知ることができました。色々な基準を知れたことで、比較もできますし、自分の考え方を再構築できたのが一番の収穫でした。

■ミラ監督も、海外で挑戦しています。挑戦することの大切さを教えてください。
ミラ:海外で教える難しさ、不安というのは感じていましたが、一方で自分のやり方が日本のサッカーに与えられる影響への信頼がありました。私の指導者としての知見が、日本のサッカーの役立つという信頼があったのです。もし、スペインと同じレベルの国にサッカーを教えるとなれば、とても苦労したと思います。それは、彼らがすでにサッカーを知っているから。でも日本ならまだ教えられること、自分が与えられることがあると確信していたので、難しさは感じませんでした。なので、ドイツで学んできたことを日本に落とし込むという梶原さんと少し近いかもしれませんね。ドイツのハンドボールを日本の選手たちは知らないので、優位に働くことがあると思います。
梶原:そうですね。その経験は自分の特徴の一つだと思っています。
ミラ:ヨーロッパには、優秀な監督が溢れています。ただ正直、日本はまだそういう状況ではありません。良さを出すには、ヨーロッパよりやりやすいと感じています。私が常に思っているのは、過程が大事だということ。結果も大事ですが、どのように初めて、どのように終わるか。例えば、録画はしていないのですが、日本に来て最初の練習を録画していれば、今の練習を観たときに、はっきりと違いが分かると思いますし、それが大事なことなのだと思います。

■三重には東海で唯一プロスポーツクラブがありません。その中でスポーツチームを率いる難しさはありますか。
梶原:ハンドボールは競技自体の認知がまだまだということもありますが、やはりプロスポーツがない三重県という部分は感じてます。ただ、その中でどうしていくかという面白味を感じていて、探っているところです。三重県には三重県に合ったやり方がきっとあるはずで、その答えはまだ見つかっていませんが、おおらかさといった県民性もありますし、きっとみんなで一つになってやろうとなれば大きく変わると思います。今はそこを模索しているところです。
ミラ:観客を集めようというところでは、アンリミテッドは他とは違う、変わったことをやろうとしています。役立つことがあるかもしれませんね。
梶原:ない物を作る楽しさもあるし、ないからこそやりたい部分もあるので。よく喩えに出される「靴がない村に靴は売れるのか」という話で、マーケットの見方によって捉え方が違うと思のですが、自分は靴を履く文化を持ち込んで売るセールスマンでいたいと思います。
ミラ:スペインでは、日本よりもスポーツのファンの絶対数が多いという違いもあります。
梶原:スポーツの楽しみ方、捉え方がヨーロッパとは違いますね。スポーツをどう楽しんでいいか、わからない人が多いです。
ミラ:スポーツは人生なんです。私は鈴鹿と同じくらいの規模の町に住んでいましたが、子供がスポーツをやっている数は何倍もの違いがあります。スポーツに対する取り組み、考え方の違いは私も感じていますので、すぐには難しいかもしれませんが、徐々に変えていきたいと思っています。

鈴鹿アンリミテッドFC
ミラグロス・マルティネス・ドミンゲス監督
生年月日:1985年4月23日
出身地:スペイン

三重バイオレットアイリス
梶原晃監督
生年月日:1983年7月15日
出身地:愛知県名古屋市

7月の試合日程

《鈴鹿アンリミテッドFC》
日本フットボールリーグ2019(JFL)
7月7日(日)17:00 vsHonda FC @都田サッカー場
7月14日(日)15:00 vsソニー仙台 @AGF鈴鹿陸上競技場
7月21日(日)15:00 vsMIOびわこ滋賀 @AGF鈴鹿陸上競技場
7月27日(土)15:00 vsテゲバジャーロ宮崎 @延岡市西階総合運動公園陸上競技場
チームHP:https://suzuka-un.co.jp/

《三重バイオレットアイリス》
第44回  2019-20 日本ハンドボールリーグ
1月5日(日)14:15 vsソニーSCM @霧島市国分体育館
1月11日(土)13:30 vsHC名古屋 @三重交通Gスポーツの杜鈴鹿
1月13日(月・祝)13:30 vs北國銀行 @三重交通Gスポーツの杜鈴鹿
1月18日(土)13:00 vsオムロン @マエダハウジング東区SC
1月19日(日)13:00 vsPI・アランマーレ @マエダハウジング東区SC
1月25日(土)14:00 vs大阪ラヴィッツ @家原大池体育館
1月26日(日)15:00 vsイズミメイプルレッズ @三重交通Gスポーツの杜鈴鹿
チームHP:http://www.mie-visc.jp/

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