COUNTDOWN TOKYO 2020 vol.19 柔道 -JUDO-

“柔道の父”嘉納治五郎

相撲と並び“日本の国技”と称される柔道が、柔術から生まれていることはご存じだろうか。柔術とは古武道の一つで、相手を殺傷せずに捕らえたり護身として身を護ることを重視する徒手武術であり、その源流の一つには相撲があるという。
そんな「柔術」を「柔道」へと発展させた人物こそ、“柔道の父”と呼ばれる嘉納治五郎である。「天神真楊流(てんじんしんようりゅう)」の修心館で柔術を習っていた治五郎は、師である福田八之助の急逝に伴い、若くして福田道場の指導者となった。その後、起倒流(きとうりゅう)や楊心流(ようしんりゅう)などほかの流派の柔術に触れ、柔術はもっと多くの人に開かれるべきだと考えるようになる。
しかし、時は文明開化の明治時代。古武道の一つである柔術は“古いもの”という認識が広まりつつあった。このままでは柔術が廃れてしまう…。危機感を持った治五郎は、柔術にスポーツとしての要素を取り入れた「柔道」を考案。「講道館」と名付けた道場を設立し、柔術が時代に受け入れられるよう自らの手で作り上げたのである。
治五郎が作り上げた講道館柔道は、小柄な治五郎が大柄な者をさらりと投げる様子に衝撃を受けた外国人の間でも広まり、海外にも進出。柔道の技術はもちろん、相手を敬い、感謝することで助け合う心を育み、自分と他人が共に良い世の中にしようとする「自他共栄」という精神まできちんと伝えられるよう、優秀な柔道家を育成し、指導者として海外へ派遣していった。

嘉納治五郎と五輪

近代五輪の提唱者であるフランス人教育者ピエール・ド・クーベルタン男爵は、国際オリンピック委員会(IOC)に日本人を加えようと試み、講道館創設者にして柔道師範、東京高等師範校長の治五郎に就任依頼の手紙を送る。五輪の理念である「スポーツによる世界平和の実現」に共感した治五郎はIOC委員就任を引き受け、第5回ストックホルム大会から日本が五輪に参加することとなった。
しかし、当時の日本では西洋のスポーツや五輪自体が国民に浸透していなかったため、国民への認知拡大を目的とする「大日本体育協会(現日本スポーツ協会)」を設立。五輪の参加競技も、分かりやすい陸上競技に絞り、選手の選考も務めた。
予選会では当時の世界記録を上回る記録を出した金栗四三が代表に選ばれたものの、莫大な渡航費を理由に辞退してしまう。これを聞いた治五郎は自ら発起人となり、後援会を立ち上げ寄付金を募ったおかげで、金栗は日本人初のオリンピアンに。今では“日本マラソンの父”と呼ばれる金栗の第一歩を、柔道の父・嘉納治五郎がサポートしていたのだった。
ストックホルム五輪以降、日本人選手が五輪で活躍するにつれ、国民の関心は増していき、次第に東京開催の誘致を望む声が出てくるようになる。治五郎もこの夢を叶えようと奔走するが、当時の日本は満州事変や日中戦争といった軍事的行動によって世界から孤立。東京開催に反対する声が強まっていく中、治五郎はIOCに東京開催を訴え続け、1936年の決選投票で日本での開催が決定する。しかし、それから2年後、IOC総会からの帰国途上、日本開催の五輪を見届けることなく、氷川丸の船内で肺炎により死去。柔道の普及とスポーツによる世界平和の実現に捧げた77年間の生涯に幕を閉じた。

柔道兄妹、同時金メダルの夢

治五郎が尽力し開催の決まった1940年の東京五輪だが、日中戦争の激化により開催権を返上。治五郎と国民の悲願が叶うまではさらに24年、待たなければならなかった。
第2次世界大戦直後、戦後進駐軍によって「武道禁止」が命じられ、学校で柔道を行なうことが禁止された期間があったものの、1948年に全日本柔道選手権大会が復活。翌年には全日本柔道連盟が結成され、1950年には学校での実施が許可された。ここから戦前以上に普及が進み、1956年には第1回世界柔道選手権大会が開催。世界規模で柔道が認知されていった。
1964年の東京大会で初めて柔道が五輪に採用され、1972年のミュンヘン五輪からは正式種目として採用。女子は1988年のソウル五輪で公開競技として実施され、1992年のバルセロナ五輪から正式種目に。そして2020年の東京五輪からは男女各3名の計6名による混合団体戦の実施が決まっている。
長年、日本の国技としてメダル獲得が期待されている柔道。歴代メダル獲得数でもその強さは歴然だが、近年は外国人選手の台頭が目覚ましく、特に重量級において日本人選手が金メダルに届かないことも珍しいことではなくなった。
そんな中、来年に控えた東京五輪での活躍が期待されるのが、男子66kg級の阿部一二三と、その妹で女子52kg級の詩の阿部兄妹だ。2018年の世界選手権では兄妹同時に世界チャンピオンとなっており、東京五輪では兄妹同時金メダルを目標に掲げる最強柔道兄妹から目が離せない。

● 公益財団法人全日本柔道連盟 http://www.judo.or.jp/

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