COUNTDOWN TOKYO 2020 vol.20 セーリング -SAILING-

開国と共に始まった日本のセーリング史

日本でレジャーとしてのセーリング競技が行われるようになったのは、1858年の開国からまもなくのことと伝えられている。200年以上に渡って鎖国を続けてきた日本で最初にヨットを楽しんだのは、横浜や神戸などオープンポート近くに多く居住していた外国人たちで、横浜では1875年にレースが行われていたという記録も残っている。
明治終盤になると日本人もレースに参加するようになり、1932年に関東、関西、九州のセーラーたちが集まって日本セーリング連盟(JSF)の前身である日本ヨット協会(JYA)が設立された。この時、制式艇として採用されたのが1枚帆のA級ディンギーで、以後、各水域にA級ディンギーが普及していった。
セーリング競技で初めて五輪に出場したのは、日本ヨット協会設立から4年後の1936年に開催されたベルリン五輪だ。財部実選手/三井卓雄選手がスター級で、藤井紀雄選手がオリンピックヨレ級で戦い、それぞれ11位、22位の成績を残している。
ベルリン大会の次は東京での五輪開催が決まっていたが、第二次世界大戦の影響で中止に。横浜港沖で行われる予定だったセーリング競技も幻となった。
ちなみに、当時の競技種目名はセーリングではなくヨット。ヨット競技は1896年にギリシャのアテネで開催された第1回近代五輪の競技種目だったが、悪天候のため実施されなかった。五輪で最初にヨット競技が実施されたのは1900年のパリ五輪から。その後、1984年のロサンゼルス五輪からボードセーリング(ウインドサーフィン)が種目に加わったことで、競技名がヨット競技からセーリング競技に名前が変更され現在に至っている。

セーリング競技初のメダルは470級

セーリング競技とは帆に風を受け、進む速さを競うスポーツだ。オリンピック競技以外にも様々な大会が世界各地で行われている。オリンピック種目は複数艇が一斉にスタートし、規程のコースを回る速さを競う「フリートレース」形式で争われるが、一対一で対戦する「マッチレース」、沿岸や外洋を走ってスタート地点からフィニッシュ地点まで移動する「オフショアレース」など、多種多様なレースが行われるのがセーリング競技の特徴である。
日本が五輪に復帰したのは、1952年のヘルシンキ大会。セーリング競技はフィン級で出場を果たしている。1960年のローマ大会には、フィン級、スター級、ドラゴン級の3種目で出場。4年後には日本初となる東京五輪の開催が決定していた。
1964年、五輪用に新設された神奈川県の江の島ヨットハーバーにて東京五輪のセーリング競技が行われた。日本勢はフィン級、FD級、スター級、ドラゴン級、5.5m級の全5種目に出場。地元開催で気合い十分だったが、大会コンディションは予想外の強風で日本選手は苦戦を強いられ、最高位はスター級の石井正行選手/大久保隆史選手の13位だった。この五輪をきっかけに江の島ヨットハーバーはセーリング競技のメッカとなるのである。
日本セーリング界の転機となったのが、1976年のモントリオール五輪で2人乗りの470級が採用され、小松一憲選手/黒田光茂選手が10位という成績を残したことだろう。乗員の適正体重が130kg前後と軽量で日本人に適していたこともあり、国内では五輪に先立ち大学選手権種目に採用され、今日まで大学や実業団などで最も盛んに活動が行われている種目だ。モントリオール大会と同じ年に国体種目にもなった。
470級の日本選手層の厚さは、世界選手権での優勝や、モントリオール五輪からリオ五輪まで、女子も同種目が採用されたソウル大会以降、すべての大会で代表選手を送り込んでいることからも分かるだろう。そして1996年、日本セーリング競技初の五輪メダル(銀メダル)を女子470級の重由美子選手/木下アリーシア選手が手にした。
1999年、日本ヨット協会と日本外洋帆走協会が合併し日本セーリング連盟が誕生し、日本のセーリング界が新たなスタートを切った5年後の2004年、アテネ五輪で男子470級の関一人選手/轟賢二郎選手が銅メダルを獲得した。

ボードセーリングからフォイリングカタマランまで

来年7月、いよいよ東京五輪が行われる。セーリング競技は前回の東京五輪と同じ江の島ヨットハーバーで開催されることが決定しており、すでに同地で開催される国際大会には多くの外国人選手たちが参加し、現地視察に余念がない。
2020年の東京五輪セーリング競技では、男女合わせて計10種目が行われる。その内訳は、日本の得意種目でメダル獲得も期待できる470級男子、470級女子。1人乗りのレーザー級(男子)、レーザーラジアル級(女子)、フィン級(男子)。高速の2人乗りの49er級(男子)、49erFX級(女子)。ボードセーリング(ウインドサーフィン)のRS:X級男子、RS:X級女子。そして男女混同で乗る2人乗りのカタマラン(双胴艇)ナクラ17級だ。
五輪のセーリング競技は時代とともに採用する艇種を変えている。ナクラ17級は水中翼搭載で船体を海面上に浮き上がらせて走ることができるなど、今までの概念を覆すような新しいレースシーンを目にすることができるはずだ。また近年は各レース艇がGPSを搭載しており、そのデータから正確な位置関係がパソコンやスマホで分かる工夫もされている。
沖合で行われるイメージの強いセーリング競技だが、五輪では予選レースを勝ち抜いた上位10チームによる決勝レースを岸に近い場所で行うなど、“見せる化”対策も進んでいる。レース映像やGPSのトラッキングデータと組み合わせることで、風や波、潮の流れなど自然条件をいかに攻略し、相手チームとの駆け引きを制するセーリング競技の醍醐味を感じてもらうことができるはずだ。
オリンピックにおける日本チームのメダル獲得数は男子・女子470級の2つ。二度目となる来年の東京五輪では、熾烈な代表争いを勝ち抜いてきた470級はもちろん、近年、国際大会で表彰台に上るなど着実に力を付けてきたレーザーラジアル級、RS:X級などでも日本人選手の活躍が大いに期待できる。セーリング競技は2020年7月26日から8月6日に神奈川県藤沢市の江の島ヨットハーバーで開催される。

Hempel World Cup Series Enoshima 2019 © JUNICHI HIRAI / BULKHEAD magazine JAPAN

 

●( 提供)公益財団法人日本セーリング連盟 https://www.jsaf.or.jp/hp/

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