COUNTDOWN TOKYO 2020 vol.25 五種競技 -MODERN PENTATHLON-

優雅な貴族のスポーツから、過酷な競技へ

5つの異なる競技で順位を争う「五種競技=ペンタスロン」は、古代と近代でその内容を変える。古代五種は、紀元前708年の古代オリンピック第18回大会から実施され、走幅跳、円盤投、スタディオン走、やり投、レスリングの5種目で争われた。

これに倣い、五輪提唱者のピエール・ド・クーベルタン男爵によって「近代オリンピックにふさわしい五種競技を」と新たに考案されたのが、近代五種だ。1912年のストックホルム大会から正式種目に採用され、フェンシング、水泳、馬術、レーザーラン(射撃、ラン)というそれぞれに全く異質な5種類の競技を、当初は1日に1種目、計5日間に渡り行っていた。

ヨーロッパでは王族・貴族のスポーツとも呼ばれて人気があった半面、さまざまな競技施設・競技用具を要することから競技人口が伸び悩んでいたが、国際近代五種連合の様々な取り組みにより、加盟国が近年では100か国を超えるなど地域的には広がりが見えてきた。 しかし、1996年のアトランタ大会から1日ですべての種目を行うようになると一転、心身ともに限界まで追い込まれる、まさに万能性が問われる競技となった。
1.フェンシングランキングラウンド(エペ)
相手の全身に対して突きを繰り出す「エペ」で戦う。1分間1本勝負で総当たり戦を行い、勝率によって得点が与えられる。短時間に次々と試合を行うため、選手は1試合ごとの瞬発力の他、途切れない集中力と自己の迷いを断ち切る勇気が必要とされる。
2.水泳(200m自由形)
水中という体に大きな抵抗がかかる環境で、全身の骨格及び筋肉を効率よく動かし続けて200メートルを泳ぎ切る速さを競う。フェンシングで最も強く求められるのが瞬発力ならば、水泳で必要とされるのは水の抵抗を回避しつつ効率よく推進力を得る技術に裏付けされたパワーと持久力である。200メートルを泳ぐのに要したタイムによって得点が与えられる。
3.フェンシングボーナスラウンド(エペ)
フェンシングランキングラウンドの下位選手から順に30秒1本勝負でスピード感あふれる試合進行が行われる。ランキングラウンドとボーナスラウンドの合計点がフェンシングの得点となる。
4.馬術(障害飛越)
貸与された馬を操り、制限時間内に競技アリーナに設置された様々な色や形の障害物を飛越しながらコースを周る。単体競技としての馬術は、長年共に練習し息を合わせた自らの馬に乗って競技を行うが、近代五種においては初めて対面する馬と短時間で信頼関係を築きながら障害と対峙しなければならない。そのためこの種目では、馬との繊細なアプローチによるコミュニケーションを図り、確固たる信念と粘り強さや柔軟さ、焦りを表に出さず冷静さを保つ精神力なども必要とされる。この種目のみ、得点は減点方式で計算される。
5.レーザーラン(射撃5的+800m走を4回)
これまでの3種目の得点を1点=1秒にタイム換算し、時間差を設けて上位の選手からスタート。射撃とランニングを交互に4回行い、着順を競う。射撃はレーザーピストルを使い、10メートル離れた場所から直径約6センチメートルの標的にレーザーを5回命中させるが、5回命中するまでは50秒の制限時間の間、撃ち続けなければならない。ランニングは800mのコースを走行する。長い距離を走った直後、瞬時に全身の動きを静止させて息を整え、精密な射撃動作を行う難しさを想像してみよう。動から静、静から動への状態変化の激しさを思えば、この種目がいかに自身の身体的・精神的コントロール能力を要求されているかがわかる。静と動の切り替えの難しさと毎回の射撃での順位の入れ替わりが見どころだ。このレーザーランでフィニッシュした着順が競技全体の最終順位となる。

それぞれに固有の技術と理論を必要とされる個々の種目をマスターするだけでなく、競技の全体像を常に頭で描き、自分の体力を計算しながら、種目が変わるごとに求められる状態に体を切り替えていく。体力に加えて強い精神力で自分の身体をコントロールできた選手のみが栄冠を手にすることができる、まさに「キング・オブ・スポーツ」であり、全スポーツの頂点を目指す競技がこの近代五種といえる。

日本は1960年のローマ大会から1992年のバルセロナ大会までは毎大会出場していたが、1日で競技を行うようになった1996年のアトランタ大会以降、選手を送り出すことができなくなっていた。しかし2008年の北京大会に日本選手として16年ぶりに村上佳宏が出場を果たすと、続く2012年ロンドン大会では男子1名、女子2名が、2016年のリオ五輪でも男子2名、女子1名が出場し、近年では、2018ワールドカップファイナル大会の女子個人において山中詩乃選手が第6位に入賞するなど、東京2020大会でのメダル獲得を狙える位置に来ている。

その背景には、最近までは競技の内容や用具の性質から自衛隊や警察出身の選手がほとんどであったが、一般の人々が使用しやすい用具にルールが改正されるなど、一般の人々の間で競技人口が広がりつつあることが挙げられる。また、日本近代五種協会も、水泳・レーザーランからなる「近代3種」を積極的に推進するなど、一般の人々への普及に努めており、選手層の拡大によって今後五輪での活躍が期待されている。

●公益社団法人日本近代五種協会 http://pentathlon.jp

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