ヤマハライダーが語る、ロードレースの楽しみ方~Interview~南本 宗一郎

全日本ロードレース選手権でST600クラスに参戦して2年目のシーズンを終えた南本宗一郎。確かな成長を感じさせるシーズンを送った彼に、今年1年の振り返りやロードレースの魅力について語ってもらった。

恐怖よりも楽しさ

■6歳の時に父親からポケバイを与えられてレースの道に進んだとのことですが、当時のことは覚えていますか?
バイク好きの父親が読んでいた雑誌にたまたまポケバイの体験走行が載っていて、試しにやってみようとなりました。姉と2人で体験しに行きまして、姉はすぐ辞めてしまったのですが、僕はすごく楽しくて、当時6歳ながらに「もっとやりたい」と言ったようで、父がポケバイを買ってくれました。それからは毎週末、近場の小さなサーキットに家族で足を運んで楽しむようになり、初心者向けのレースに出ることになったのですが、そこでいきなり優勝することができました。それがすごく嬉しくて、どんどんレースをやりたい、優勝したいと思うようになっていきました。本格的にプロとしてレースをやりたいと思ったのは、10歳くらいの時です。ポケバイからミニバイクにステップアップして、レーシングスクールに通っていたのですが、講師の先生たちが全日本を走っているライダーで、話を聞いたりしているうちに、レースの世界で走りたいと思ったことがキッカケでした。

■レースに対して、転倒などの怖さは感じなかったのですか?
怖さよりも楽しさが大きかったですね。ポケバイといっても時速80kmくらい出るのですが、とにかく楽しかったです。楽しくないと続けられませんので。レーサーになろうと思った一番の理由はそこですかね。

■ロードレースの魅力を教えてください。
走っている側としては、個人的にサーキットの高速コーナーが好きです。高速コーナーをギリギリまで速いスピードで入っていくときが快感というか、気持ちいというか。行きたいコースにちゃんとバイクを通らせてるときに「乗れてるわぁ」と感じます。自分が動かないとバイクも走りませんので、自分の思い通りにバイクが走ってくれた時は最高ですよね。観戦する側からすると、1000ccなら時速300kmくらいで走るので、信じられない速さで目の前を走っていきます。迫力があって、面白いと思います。

結果を出すのが一番の恩返し

■最終戦で初優勝を飾りましたが、今年の全日本ST600を振り返ってみていかがでしたか?
開幕戦と2戦目で3位表彰台に上がることができました。表彰台自体が、全日本では初めてのことだったので、連続で乗ることができて良い波には乗れていましたが、鈴鹿8耐のフリー走行で大きく転倒をしてしまって、怪我をしてしまいました。その影響でチームも8耐をリタイアせざるを得ず、全日本の後半戦も厳しい状況になりました。8耐明けのレースでは痛みが酷くて練習ができず、ぶっつけ本番でレースに臨みましたが、ポイントランキング的にも落としてしまいました。その後もうまく走ることができず、チャンピオンの可能性がなくなった状態で迎えた鈴鹿での最終戦。鈴鹿は地元ですし、6月のアジアロードレース選手権(ARRC)も鈴鹿で優勝できていたので、自信のある好きなサーキットでした。勝つしかないという想いでレースに臨み、ほとんどトップタイムで良いレースができ、決勝でも自分の思い描いた通りの走りで勝つことができていたので、最高でしたね。チームのみんなが自分のことのように喜んでくれたことが嬉しかったです。

■アジアロードレース選手権ではSS600スポット参戦で自身初優勝を飾りました。振り返ってみていかがですか?
SS600のクラスは、VR46マスターキャンプで一緒に参加していたライダーたちとバトルしていました。同年代ですし、地元の鈴鹿でもあったので、彼らには負けたくないという想いがアジアロードレース選手権では強かったです。レース1は上手いこと勝つことができ、それがAKENO SPEED・YAMAHAに入っての初優勝でした。そこでも自分より監督が喜んでくれて、周りの喜び方が最高でした。ピットに帰ってくるときの、みんなの笑顔が嬉しかったです。

■昨年の鈴鹿8耐ではSSTクラスで3位になり、今年はケガで断念しましたが、8耐についての想いを聞かせてください。
小学生の時はよく観戦していました。いつかは出たいレースの一つだったので、去年初めて参戦したときは感動しました。でも真夏に1時間、自分1人で走ることが本当に大変で、当時は死にそうでしたね(笑)。去年は台風が来ていたので他のライダーが「いつもより暑くないね」と言っていたのですが、「嘘やろ」と。自分の体力のなさを思い知らされました。去年はSSTクラス(※)で3位に入ることができたのですが、チームの最高位は2位。そこを超えるために2015年から毎年挑んでいて、「今年こそは」と意気込んでいたのですが、僕のケガで残念なことになってしまいました。来年もチームは参戦予定なので、僕が走るかどうかは分かりませんが、走るとなったら絶対にSSTクラス初優勝をみんなで成し遂げたいです。(※)=改造範囲が少なく市販車に近いマシンで競うクラス。耐久レースでは改造範囲が大きいEWCと混走する。

■ヤマハ発動機の若手ライダー育成プログラム「VR46マスターキャンプ」に参加した経験は糧となりましたか?
当時、世界で走っているライダーたちと一緒にトレーニングできたことはすごく刺激が強かったです。こんな走りをするのかという驚きや発見がありました。彼らはバイクを全部、自分の支配下に置いています。一方、僕らはバイクに乗せられているという言い方が当てはまる。世界で走っている人たちは完全にバイクを操っていて、自分が行きたいコースを自在に通ることができていました。メンタル的にも差を感じましたし、毎日のようにレベルの高い環境でトレーニングできていたので、レースだけで生活できていることも含め、うらやましいと思いました。

■キャンプの後は考え方が変わった?
教えてもらったことを参考にするようになりました。走る面もそうですが、一番は走る前のことが参考になりました。アップの仕方、ストレッチの仕方ですね。走る前に自分の体を温めて、心拍数を上げるようにストレッチをする。なのでストレッチの時間がすごく長くて、「もう走ろうや」って思うくらい(笑)。それくらいストレッチが大事だとトレーナーさんも言っていたので、そこは採り入れています。

来年は勝負の年

■今後、学生生活とレース活動の両立についてどう考えていますか?
去年までは両立できていました。高校の時は、学校が理解してくれていたこともあり、レースに参加するときは公欠扱いにしてくれていました。ただ、大学はそうはいきません。僕はレースメインでやらせてくれと親には言っているのですが、大学も大事ですし…。来年、チャンピオンを獲れなかったら先はないと思っている勝負の年なので、本当にレースに集中するために1年休学するつもりです。同じST600のクラスに岡本裕生選手というライダーがいるのですが、高校を中退して、すごい量のトレーニングをしていると聞いていています。今年のチャンピオンの小山知良選手もそうですし、自分が講義を受けている間も彼らがトレーニングをしていることを考えると、大学に行っていていいのかなと思ってしまいます。そういう人たちに勝とうとしているのであれば、なおさらですね。

■今後の目標について教えてください。
YAMAHAには、ちょうど悩んでいた次の年にVR46マスターキャンプに連れて行ってもらい、自分の価値観を変えるキッカケを与えてくれました。本当にYAMAHAのバイクでレースができて良かったなと思いますし、そのために今のチームでST600のチャンピオンになって、ファクトリーチームに行くのが目標です。中須賀(克行)さん、野佐根(航汰)くんに続けるように、あの人たちに勝つために、まずはファクトリーライダーになる。そこが目標です。理想は来年チャンピオンを獲って、ファクトリーチームで走れるよう頑張ります。

■最後に、読者へのメッセージをお願いします。
全くレースを知らない人でも、スタンドから観ると距離は遠いですが、音とスピード、迫力は他のスポーツではなかなか味わえないものがあると思います。興味がなくても、1度は生で観てほしいです。色々な人に観ていただいて、それで面白くないと言われたらそれまでですけど。僕も普段、レースを知らない人を呼んだりしますけど、みんな面白かったと言ってくれます。そこから何度かレースに来るようになった人もいますし、みんな知らないだけで、観たら面白いスポーツはいくらでもあります。その一つとして、レースを観に来ていただけたらすごく嬉しいですね。もし観に来ていただけたら、黄色いバイクでだいぶ目立つ仕様になっているので、見つけてください。目立つバイクですし、一番前を走っていると思いますので、分かるはずです。ぜひ観に来てください!

南本 宗一郎
Soichiro Minamimoto
生年月日:2000年2月2日
出身地:奈良県奈良市
所属:AKENO SPEED・YAMAHA

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