Interview モトクロスライダー 本田七海(TEAM KOH-Z)

全日本モトクロス選手権レディースクラスにTEAM KOH-Zから参戦している本田七海。2019シーズンは年間4勝をマークして、自身初、そしてヤマハ発動機にとっては2015年以来2回目となるチャンピオンを獲得した彼女に、モトクロスの魅力やコロナ禍での過ごし方などを聞いた。

周囲の反対を押しのけての決断

■他のスポーツではなくモトクロスを選んだ理由は?
キッカケは、お父さんが趣味でやっていたので、ついていくうちに気が付いたら自分も乗っていました。小学校1年生くらいから乗り始めましたが、その頃はあくまで遊び、趣味の感覚でバイクに乗っていて、2歳から始めた水泳は本気でオリンピック出場を目指していました。中学校に進学すると、水泳ではジュニアオリンピックを目指して毎日のように練習し、モトクロスでもレースに出られるようになって今も所属するTEAM KOH-Zのお世話になることが多くなっていました。高校進学のタイミングで、水泳かモトクロスかどちらか一つを選ばなければならなくなり、モトクロスなら公立、水泳なら私立で強いところへの進学を考えました。正直、水泳でオリンピック出場は難しいと思い始めた時期でもあり、思うような結果も出せていませんでした。一方で、モトクロスが楽しくなってきた時期だったので、水泳ではなくモトクロスを選びました。その時に感じていた、競技の楽しさを重視した決断になります。

■モトクロスのどこに魅力・楽しさを感じていますか?
小さい頃から水泳をやっていたことで、人と競り合うことが得意ではありませんでした。水泳はレーンで分かれているので、他の選手と接触することはありません。でもモトクロスはコースの奪い合いですので、苦手な部分でしたが、水泳と違うことが新鮮でもありました。始めはできないことの方が多かったのですが、できないことができるようになる感覚が、自分の中で練習中にわかるのが嬉しかったし、楽しかったです。自分で分かるのが水泳との違いですね。水泳はタイムだけなので、泳ぎ切ってタイムを確認して、ようやく結果が分かります。モトクロスは「このコーナー上手く曲がれるようになったな」とか、道中でも成長を感じられることが楽しいです。

■決断した際、女性のモトクロスレーサーは門戸が狭く、将来に対して不安はありませんでしたか?
モトクロスを選んだときは、そこまで深く考えていませんでした。楽しいから、好きだから続けたいという気持ちを大事にしていて、将来のことまでは考えていませんでした。でも、チームのオーナーに「女の子だと特に難しい世界で、ケガもするし、辞めた方がいい。水泳一本でオリンピックを目指せ」と言われました。周りにはすごく反対されましたね。オーナーからは「(水泳で結果が出ないから)逃げているんじゃないか」とも言われて、当時はそうは思っていませんでしたが、今思えばそうだったかもしれません。両親はそこまで反対はしなかったのですが、おじいちゃん、おばあちゃんにはすごく反対されました。でも去年、チャンピオンを獲ることができて、周りの人たちよりも時間はかかりましたが、モトクロスを選んで良かったな、あの時の決断があったからチャンピオンを獲ることができたんだなと思えました。

■チャンピオンになれたことは大きかった?
大きかったですね。素直に嬉しい…というよりホッとしました。やっと獲れた、やっと一つ恩返しができたなと。一つの目標でしたので。

講師の経験を通じて成長できた

■「モトクロスのレースをやっている」と言った時の周囲や女子の反応は?
学生の頃は、『モトクロス』と伝えても「何それ」って言われてしまいます。なので、そこまで深くは踏み込んでは来ないし、私も詳しく話すこともありませんでした。高校を卒業してからはモトクロスに専念していたこともあって友達と連絡も取っていませんでしたが、去年友達同士で遊んだ際にたまたま私の話になったらしく、名前を調べたらチャンピオンになったことを知って、チームのInstagramにメッセージをくれました。

■モトクロス以外に趣味や息抜きはありますか?
自分の中での一番の息抜きがご飯を食べることと寝ることです。それ以外の時間はバイクに触れる環境になっていて、何かあれば自分で整備もしています。気晴らしにどこかに行くということもあまりしませんね。

■もしもMXをしていなかったら、何をしていたと思いますか?
水泳でオリンピックを目指していたと思います。それしか取り柄がなかったので…(笑)。今でも、トレーニングの一環で泳いだりはしますよ。

■ともに熱中した水泳とモトクロス、改めて違いを教えてください。
モトクロスは、走りながらどこかでミスをすればタイムが出ないですし、上手くいったと思ったらタイムが伸びて、分かりやすいです。でも、水泳は最後まで泳がないと分かりません。モトクロスは道中で上手くいった、失敗したが実感できます。また、小さい頃からできることは全部自分でしろと言われてきたので、整備も自分でします。自分だけではなくて、バイクのことも知れと言われてきました。そうすることで、レーサー一本だけではなくて、仕事としても幅が広がるためだそうです。

■「大人のバイクレッスン」の講師も務めていますね。
レースだけでは女の子はやっていけないということだったので、今までやってきたことをちょっとでも生かせる仕事なのでお引き受けしました。正直、教えるのは得意ではありませんでした。私はレースも練習も、考えながら乗るタイプではなく、感覚で乗るタイプなので、技術を言葉にして伝えることがすごく苦手でした。言いたいことはあるけど伝えられないということが多かったのですが、色々な人から教えてもらい、一つひとつできるようになって、お客さんが興味を持って質問をしてくれたりとか、話しかけてくれたりすることで、今は教えることがすごく楽しいと感じています。講師を務めた経験が去年、チャンピオンを獲れた要因の一つだとも思っています。というのも、教えることで自分の理解も深まりますし、相手に分かってもらえると自信になります。人前で話すのが得意ではなかったのですが、そういったことができるようになったことで、講師の経験を通じて人として成長できたと感じています。

さらに強くなった姿を見せたい

■コロナの流行によってモータースポーツ界も大きな影響を受けました。この期間、どのように過ごしましたか?
また、バイクに乗れないことで気づいたことなどありますか?乗る回数は減りましたが、バイクに触れる環境を作って貰っていたので、常に時間があればバイクを整備していました。これまでは基本的な整備しかやってきませんでしたが、この時間を利用して、エンジンの分解を教えてもらいながら、できるようになってきました。この期間中、バイクから離れていたわけではなく、今までできなかったことに挑戦でき、よりバイクのことを理解することができました。

■今後の見通しが難しい状況ですが、今シーズンの目標を教えてください。
目標は連覇です。ただ、それは最低限の目標で、実は去年の目標は全勝でのチャンピオンでした。全勝できなかったので、今年こそは達成したい。レースが少なくなったので、ある意味チャンスかもしれません。

■選手としての自分の魅力・特徴・見てほしいポイントは?
去年、レースを観てくれていた方は分かると思いますが、私はスタートから前に出てそのまま先行して勝つパターンが多い。今年は先行しなくても勝てるようなレースをできるように、この期間でメンタルの部分も鍛えています。今年のチャンピオンは違うな、またさらに強くなったなと感じてもらえるようなレースをしたいです。

プロフィール

本田 七海
Nanami Honda
生年月日:1997年7月29日
出身地:大阪府
所属チーム:TEAM KOH-Z

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