関東大学サッカー後期リーグ戦開幕記念インタビュー 川崎フロンターレ監督 風間八宏

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筑波大学在学中に日本代表に選出され、ドイツでもプレーした日本サッカー界の大物が登場!母校である筑波大学を率いて多くのプロ選手を輩出し、現在は川崎フロンターレの指揮官として4シーズン目を迎えた風間八宏監督に、大学サッカーと自身の指導者論について語っていただいた。

熱を持って接すれば、必ず熱が返ってくる

■大学サッカーの役割、目的についてどのようにお考えですか?
「大学の目的はいくつかあると思います。日本人は成長が遅いので、海外みたいに18歳ですべてが成立するわけじゃない。大学というのは色々な意味で社会の準備をする期間だと思います。1つは、どういう進路に自分たちが進んでいくのか。やはり、大学生になっても自分の考えがまだまとまっていない選手たちがほとんどなので、そういう選手たちに自分の考えだったり、進路もそうだし、大学生とはどういうことかを教えていかないといけません。次のステップにどう向かうか、4年間をどう過ごすかが一番大事なところ。僕も選手時代そうでした」

■サッカー以外の進路に関してはどうお考えですか?
「多くの選手をプロにさせることが嬉しいわけではなくて、就職して、その後に繋がっていくことが嬉しいです。大手の証券会社に行った人もいたし、総理大臣になっちゃう人もいるかもしれない。その中で、何を本気で望ませるか。その本気度というのはなかなか掴めないので、こちらからアプローチしていかなければいけないと思っています。色々な可能性を引き出してあげたいし、一番向いているものを探してあげたい。ただ、それは自分が好きなものとは限りません。勘違いしがちですが、向いているものと好きなものは同じではないんです。そういう理解を含めて、ちょうど大人になっていく時期だと思います」

■風間監督の現役時代の頃と、今の大学サッカーの違いは感じますか?
「僕らの頃というのは、サッカーをやっていても教員を目指している人もいて、コーチになりたい人もいるし、プロになりたいという人は圧倒的に上手かった。今みたいに『大学に入ってやりたいことを見つける』みたいな人はあまりいませんでしたね。みんな、大学に入るときには目的がありました。サッカーが上手くて実業団から誘われても、行かない人は行かなかった時代です。もちろん、今はまた社会情勢も変わっていて、就職すれば安泰というわけでもないですし、個人の選択肢も多くなっています。そんな学生たちを、ある方向に向けて本気にしなければいけない。その作業はとてもエネルギーがいるところで、そこをしっかりすればチームは強くなっていきます。大学生が面白いのは、こっちが熱を持って接すれば、必ず熱が返ってくること。日本の大学の特別な、面白いところだと思うし、すごくエネルギーがあります。そのエネルギーをどこに向けるかというだけの話だと思うんですよね。可能性というのはみんなにあるはず。そこで『自分に期待しろ、できるぞ』という話をよくしていました。みんなはじめは怒られながらも、徐々に自立していく。その過程を見るのが楽しいですね」

大学はエネルギーの充電期間

筑波大学時代の風間監督

■監督を務める川崎フロンターレの谷口彰悟選手、森谷賢太郎選手、車屋紳太郎選手らは筑波大学でも指導しています。
「僕が大学で教えた子たちはみんな賢かったですね。彼らが最初に僕の指導を受けたときは、『何を言ってるかはわからないけど言われたとおりにやってみたら上手くいく』と言っていました。それを繰り返していくと、最終的には“何も言われていなかった”ことに気づくんだそうです。『自分でやれ』ということをずっと教えてもらっていたと気がつく。そうなったときが大人ですよね。僕は上手くいくことしか教えないので、教えたらあとは自分次第。社会に出てから気がつく人も結構いて、そういうのも嬉しいですよね」

■大卒選手の魅力とは?
「大卒というより、年齢じゃないかなと思います。日本の社会だと、18歳まではみんな家にいて、寮生活だとしても恵まれていますよね。社会人で考えても、22歳で入社してそこからまた勉強して、仕事をしていく仕組みになっています。なので必ずしもヨーロッパみたいに18歳とか15歳で自分の進路を決めて何かしなければいけないなんてこともない。そういう意味では、人生の中だと一番エネルギーを溜めておける時期だと思います。人によっては無駄と感じるかもしれないですが、一番充電できる時期ですので、お金は貯まらないですが、もしかしたら将来お金を貯めるためのエネルギーかもしれない。すごく贅沢で無駄な時間。だから大学っていいなと思いますね」

■来年、順天堂大学からの加入が内定している長谷川竜也選手に期待することはありますか?
「まず、ウチのチームは本気でやりたいって入ってこないとなかなか入れないチームです。ちょっと他のチームとは色が違います。そういう意味では、竜也もここだけに入りたいというものすごくハッキリした意思を持っていたので、能力のある子ですし、楽しみにはしています。ただ、ウチには色々な“怪獣”がいるから、その中で、自分もちゃんと“怪獣”になれるかどうか。大学とはまた違う社会だけど、大学時代に形成された、自分に期待してやり続けるという頭があれば、絶対に成功すると思います」

来季、順天堂大学からの加入が内定している長谷川竜也選手

理想は監督の不要なサッカー

■風間監督が理想とするサッカーとは?
「世界中で色々な人が理想を掲げてやっていますが、所詮は人のやることですから…。しいて言えば、僕がいらなくなることが理想ですね。選手たちが自分たちで考えて、解決してしまうこと。何でそっちに行くんだというプレーで結果的に突破してチャンスを作ったり、僕も驚くようなプレーをする。僕を良い意味で裏切ってくれると面白いと思うし、僕が面白いと思うということは観ているほうも面白いでしょう。色々な驚きを提供するのが一番良いサッカーだと思いますね」

■最後に、サッカー選手を目指す若者へメッセージをお願いします。
「サッカー好きな選手は多いけど、プロになれるのは好きか嫌いかじゃなくて、選ばれるかどうか。『僕、頑張ってます』なんて言葉はいらなくて、頑張っているかどうかは他人が決めることですから。そこに選ばれるようになって欲しいし、そのためにどうするかといえば、人一倍やるしかないんですよ。サッカーボールは素直なので、蹴った分だけ上手くなります。考えた分だけ頭も良くなるし、やった分だけ残る。結果的に、そういう人間しか残りません。好きか嫌いかではなくて、本当に自分に期待して、そういうところを求めていって欲しい。『練習しなきゃ』という言葉が出るようではプロになれないし、夕飯の時間になっても好きでずっとボールを蹴っている人の方が上手くなる。そこが一番楽しい時間ですから。プロにはそういう人しかいませんよ。また、みんなプロになれなくても、向いているものは絶対にあるので、それまでに培ったエネルギーを基に、向いているものを探してほしいと思います」

プロフィール

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風間 八宏
Yahiro Kazama
1961年10月16日生まれ 静岡県出身
筑波大学在学中に日本代表に選出され、卒業後はドイツへ。帰国後に入部したマツダSCがサンフレッチェ広島となり、Jリーグ開幕戦では開始1分でチーム第1号ゴールと日本人選手Jリーグ初ゴールを記録。1994年にはキャプテンとしてサントリーシリーズ初優勝に貢献した。引退後は桐蔭横浜大学(1997年~2004年)、筑波大学(2008年~ 2012年)の監督を経て2012年に川崎フロンターレの監督に就任した。

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