ラグビージャーナリスト村上晃一がラグビーW杯の見所を解説!

AG1O0593

4年後には日本で開催されることもあり、注目度が高まっているラグビーワールドカップ。ラグビーの母国イングランドで開催される一大イベントを待ちに待っているラグビーファン、そしてこの大会で初めてラグビーを観るという方のために、J SPORTSでラグビー解説を務める村上晃一氏が大会の見所や日本の対戦相手の特徴について解説する。

A36T1856

■日本が決勝トーナメントに進める可能性は?
「組み合わせが決まった瞬間は、他のプールよりも突破できる可能性のあるプールに入ったなと思いました。ラグビーの世界では、ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリア、イングランド、フランスが世界のビッグ5といわれており、このほかにウェールズ、アイルランドを加えた7カ国は、日本にとって本当に勝つことが難しい国になります。ということは、それ以外なら可能性があるということであり、7カ国で一緒になったのは南アフリカだけですから、可能性はあると思います。しかしそのためには、波乱を起こし続けなければいけません。仮にどの国も実力通りの力を発揮すれば、無理でしょうね。世界から見たら、日本が4連敗しても驚かれないですし、同じプールで日本より世界ランキングが下なのはアメリカだけですから。可能性がなくはないですが、もし行けたら本当に凄いことです。これまで7回出場して、1勝しかできていないチームが、1つの大会で3勝するというのは信じがたい。もしそれが実現すれば、世界のラグビー界で語り継がれる奇跡になりますよ」

■1次リーグで鍵になる試合は?
「2戦目のスコットランド戦ですね。決勝トーナメントを目指すなら、ここに勝たないと話になりません。そのためには、まず南アフリカと良い勝負をする必要があります。南アフリカにボコボコにやられてしまったら、スコットランドには勝てません。例えスコア的に差が開いたとしても、内容が良ければ、手応えをつかめるような試合であれば良いと思います。エディーさんも最初の試合に全力を出すと言っていますが、そういうことだと思います。やってきたことは正しかったと選手たちが信じられるような試合をしてほしいと思います」

■ズバリ、優勝予想は?
「優勝は…ニュージーランドとするのが順当でしょうね。敗れるとしたら、準々決勝でフランスと当たったときですね。ここがニュージーランドにとっての鬼門になると思います。1999年と2007年のワールドカップで、2度も準々決勝でフランスに負けていますし、ニュージーランドにとっては嫌でしょうね。これはもう相性です。それから今、ヨーロッパで一番強いのがアイルランドです。ニュージーランドが本命で、アイルランドが2番手。アイルランドは組み合わせにも恵まれていて、1位通過すればおそらく決勝までニュージーランドや南アフリカと当たらないので、決勝までは行くと予想しています。あとは、イングランドが開催国として意地を見せるかもしれません」

■初めてラグビーを観る人へ
「ラグビーが年々フィジカルなスポーツになっている中で、フィジカル面で弱い国がどこまで頑張れるか。W杯はどの国もかなり堅く戦うので、スーパーラグビーのようなエンターテインメント性はあまりなく、ガチガチに勝ちにいく戦いをします。そこのとことん身体をぶつけていく戦いが本当に凄い。また、サポーターも本気で凄い声援を飛ばします。ラグビーの代表チームは国籍を問わないので、チームの中に色々な人種がいて、国歌ではなくて応援歌を大合唱する様は、荘厳な印象を受けるはずです。こうした文化はあまり他のスポーツにないですよね。人種も民族も混ざっている。日本も色々な国の選手がいますし、それらが一つになって戦っている点が、ラグビーの面白さだと思います。観客動員はこれまでで一番になるはずで、史上最大、最多の観客を集める大きな大会になることは間違いありません。観たことがない人は驚くと思いますよ。4年後にはこれが日本に来るんだ、凄いことなんだということを感じて貰えたら嬉しいですね」

A36T1860

VS南アフリカ

世界最強のパワーラグビーをするチームです。一番大きな選手たちが、一番身体をぶつけてきます。真っ直ぐにぶつかってきて、人が前にいても避けません。非常にフィジカルに自信を持っているチームで、キックを多用して相手に取らせて、取った選手に向かってタックルして奪って攻めてきます。パワー系ラグビーが好きな方にはたまらないチームですね。

■注目選手:テンダイ・ムタワリラ(Tendai Mtawarira)というプロップの選手ですね。「ビースト」という愛称で、彼がボールを持つと観客が「ビーーースト!」と叫ぶ人気者です。トップリーグでやっている選手もいて、とにかく迫力満点のラグビーを披露してくれます。ラグビーが盛んな国ですし、過去2回、W杯で優勝している、間違いなくプール内最強の相手です。

■戦い方&キーマン:日本はとにかく、身体の大きな南アフリカを疲れさせないといけません。向こうはキックを多用してきますから、それをただ受けるのではなく、賢く戦う必要があります。逆に日本がキックで南アフリカの選手を後ろ向きに走らせると、相手は凄く疲れます。日本が常にボールの行き場所をコントロールしながら戦うために、日本の9番、10番、12番、15番は重要です。上手くキックを使って相手を後ろに走らせないといけないので、一番キック力のある五郎丸はキーマンでしょうね。

VSスコットランド

■特徴:王道というか、どストレートな戦い方をしてくるチームです。ただ、これまでは不器用なイメージだったのですが、最近は展開力もつけているようです。フォワードもかなり身体が大きいのですが、南アフリカほどアスリート揃いではないので、スクラムで日本はプレッシャーをかけたいところです。スコットランドが前に出にくくなるような圧力をかけて、日本の素早いパス回しで崩して欲しいですね。

■注目選手:日本のファンの人も知っていて、確実に目立つのはロックのリッチー・グレイ(Richie Gray)。2m を超える長身ですが、金髪で凄くキレイな顔をしている超男前。日本の女性はパッと観たら絶対好きになる選手だと思います。

■戦い方&キーマン:ここのポイントはスクラムですね。スクラムで圧力をかけられるということは、日本が自由に攻めることができるということです。これまでのW杯で日本が負けるパターンは、スクラムで押されて、良いバックスを持っているのに良いボールが出てこないというケース。押されながら出てくるボールは相手もディフェンスに出やすいので結構大変なんです。逆にスクラムさえコントロールできれば、バックス同士の勝負ができます。素早くパスで崩すために、起点になるスクラムをしっかりやる。そしてパスをどんどん回すなら、鍵を握るのはスタンドオフの立川でしょう。立川のパススキルはエディーHC も世界トップレベルと認めています。彼のパスで周りを走らせて、スコットランドのディフェンスを崩してもらいたいですね。

VSサモア

■特徴:本来、日本が最も苦手とするチームです。個のアタック能力が高い選手が多く、ほとんどの選手がスーパーラグビーで活躍しています。サモア人といっても、ほとんどの選手がニュージーランドやヨーロッパなど世界中で活躍していて、「ミニオールブラックス」と形容できるチームですね。

■注目選手:ティム・ナナイ=ウィリアムス(Tim Nanai-Williams)という選手が、本当はニュージーランドの7人制代表になったことがあるのでサモア代表にはなれないのですが、今回は7人制ラグビーがオリンピックに採用されたことに関連する特例で代表入りしています。アタック能力がもの凄く高い選手です。また、サントリーに所属しているスタンドオフのトゥシ・ピシ(Tusi Pisi)も、もの凄いステップワークで何人でも抜いてしまうタイプです。このトゥシ・ピシを含め、ジョージ(George Pisi)、ケン(Ken Pisi)とのピシ3兄弟は注目ですね。

■戦い方&キーマン:トゥシ・ピシと1対1の状況になったらほぼ間違いなく抜かれてしまいます。なので、できるだけ1対1にならないように、フォワード戦、ボールの奪い合いのところになるべく人数をかけずに戦って、ディフェンスにたくさん人を回せるようにして、相手1人に対して常に2人でタックルするよう続けなければいけません。キーマンはやはりフォワードの8人ですね。そして彼らをリードするのは、フッカーの堀江翔太と、主将のリーチ・マイケルです。この2人が引っ張って、フォワードで圧力をかけてほしいですね。

VSアメリカ

■特徴:アメリカも結構、日本が苦手とする相手です。1987年と2003年のW杯で2回負けていますし、相性はあまり良くありません。ただ、普段テストマッチでやるときは勝っていますし、日本も自信を持っていると思います。アメリカはあまり特徴がなくて、そんなに器用な選手もいませんし、動きもあまり速くありません。身体は大きいですけど、怖いチームではなく、日本が本来の力を発揮すれば大丈夫だと思います。ただ、もし日本が3連敗していてモチベーションが下がっていたら、やられてしまうかもしれません。それはアメリカにとっても同じことです。

■注目選手:日本でもプレーしていたフランカーのトッド・クレバー(Todd Clever)です。彼を見ていれば分かるように、トップリーグでやっていてもそこまで卓越した選手ではありません。ただ気になるのは、7人制のアメリカ代表がすごく強くなっていることですね。オリンピック競技に採用されたこともあり、人材を確保してナショナルオリンピックセンターで鍛え上げています。その選手が何人か入ってくるので、彼らのスピードには注意が必要でしょう。

■戦い方&キーマン:こんなに練習している日本はかつてないですし、アメリカにはよほど調子を落とさない限り勝つと思います。日本の選手が劣っているところはないですし、日本が今やっているスピーディなラグビーができれば勝てるはずです。

プロフィール

AG1O0471

村上晃一
Koichi Murakami
ラグビーマガジン編集長や出版局を経て、フリーランスの編集者、記者として活動。ラグビーマガジン、Number(文藝春秋)などにラグビーについて寄稿し、J SPORTSのラグビー解説も98年より継続中。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

コメントは利用できません。

ページ上部へ戻る