003年ダンロップ女子オープン最終日。18番のグリーン上の宮里藍は、震えの止まらない手と足を静めるように心に念じた。
「ただ真っ直ぐに打とう」
この日トップに一打差の2位でスタートした宮里は、最終ホールで2メートルのバーディパットのアプローチに入った。ここまでに3人が4アンダーで首位に並んでいた。そのひとりの片山はすでにホールアウトしており、もうひとりは同じ組で回る山口だったが、彼女も先ほど7メートルのバ−ディパットを外したばかりだ。ただ真っ直ぐに、と念じて打ったパット、ボールはカップの中央に吸い込まれた。18歳と101日、東北高校3年生の少女は、この瞬間、日本女子ゴルフ界史上最年少そしてアマでは実に30年ぶり、ツア−制度の施行後では史上初となるまさに歴史的な優勝をなし得た。
宮里藍は、ゴルフファンなら誰もが知るところの宮里3兄弟の末っ子。長兄・聖志、次兄・優作はすでにトーナメントプロとして活躍しており、兄たちの影響で4歳からゴルフを始めたという。今大会が故郷・沖縄から“ゴルフ留学”している言わば第二の故郷・宮城での開催だったこともあり「苦しかったけど、藍チャ−ンと大勢のギャラリーが応援してくれたから頑張れた」と喜びの涙があふれていた。プロトーナメントに参戦24試合目にしてつかんだ頂点の座だ。
バックスイングでフェースが開く悪い癖が出るなどショットが安定せず、決して調子が良かったわけではない状態のなか「最後まで我慢」と自分に言い聞かせながら、試合途中にダウンスイングを修正する精神力の強さは、やはり並みの18歳ではない。
そんな藍ちゃんが、なんとプロになることを表明した。
日本女子プロゴルフ協会(LPGA)も男子トーナメントを統括する日本ゴルフツアー機構も、現役の高校生がプロ転向という事態に「いまだかつて例がない」とコメント。ただLPGAの規定には「アマチュア選手がツアーで優勝した場合は4週間以内に選手登録すれば1年間の出場資格を取得できる」とある。藍ちゃんの場合、この規約を基づいてプロ活動が可能ということになる。
ちなみに優勝したダンロップ女子オープンの賞金1,080万円と副賞の自動車はアマであるために受け取ることができず。賞金は2位以下に分配、副賞の車は主催者から子供のための病院に寄付されたそうだ。
|