んなに長く競技者としてスノーボードを続けるはずじゃなかったんですけどね。私にとってスノーボードはかけがえのない大好きな遊びですから、競技というよりは滑ったり飛んだり自由にただ楽しんでやりたいという気持ちが強いんです。
実はソルトレイク五輪の前もちょっと悩んだことがあったんです。五輪はどうしても競技性が強いからアスリート色がつくのが恐かったんですね。一度五輪に出ると、私は「五輪選手の三宅陽子」と呼ばれてしまう。私はそうなりたいのか、そんな名前が欲しいのか、なんて真剣に考えましたね。私はただスノーボードをしたいだけだからそんな名前は必要ないとか。もしそうなら2年間もいったい何を頑張るんだろうか。そんな頑張りは無駄なんじゃないかって。そんな時に長野五輪に出た方に相談したら「チャンスがあったら絶対に出た方がいいよ。皆それぞれ感じ方は違うだろうけど、五輪には他にない特別な何かがある。yoにはyoの五輪が見つかるはずだから」とアドバイスしてくれたんですね。それでソルトレイクに出ることになって、そうしたらこれがメッチャ面白かったんですよ。他の国際大会とはまったく違っていて、ワールドカップみたいなごちゃごちゃした感じとも全然違う。五輪の会場は独特の雰囲気なんです。観客と競技者の呼吸が一体になって、時間が止まって音も遮断される瞬間があるんです。その時その場所は私だけの時間。「行っていいよ!」と誰かが言ってくれたような感覚があるんですね。邪念がなくなるというか、もう順位やポイントといった考えが一切頭にはない、もう楽しくって仕方なかった。よし、遊ぼう!見たいな感じ。
で、結果は8位入賞だったけど、ドラマ仕立てみたいでしたね。一発目から顔面落下して鼻血出して「ああ、やっちゃった!」と言う感じで、翌日の新聞に「三宅、顔(がん)張った」なんて書かれたりして、結構、皆さんにも喜んでもらえたみたいだし、本当に楽しかったですよ。
|