| 藤琢磨が、2002年にフル参戦して以来、BARホンダのドライバーとしてF-1に復帰することになった2004年、先輩の片山右京は確信めいた口調でこう言っていた。「いくつかの見えない問題はあるにしても、琢磨は間違いなく表彰台に登ることになる。それも前半戦のうちにね」と。
片山の予言は、見事に的中することになった。今年の琢磨の成績は、18戦中、9回が8位以内の入賞で、うちアメリカGPでは念願の表彰台に立った。シリーズを通して常に上位に絡んでいく安定した実力があることを示すとともに、王者フェラーリに臆することなく攻め込んでいく果敢なドライビングスピリットは多くのF-1ファン、とくに欧州の眼の肥えたF-1通を魅了した。琢磨の出現で、F-1は俄然面白くなったのである。
ドライバーズ・ポイントも全体の8位となった琢磨の活躍もあって、BARはコンストラクターズ・ポイントで昨年の5位からライバルのルノーを凌ぎ、フェラーリに続く2位へと躍進。もっとも今季は同僚のジェイソン・バトンも琢磨も表彰台の最高位に立つことはなかったので、一度の優勝もなく、コンストラクターズで2位になったのはBARが初である。
この一年で琢磨はすっかりF-1ドライバーとしての確固たる地位を築いた。なぜなら僕らは彼が入賞したくらいでは、もう満足できなくなってしまっているからだ。すごいことなのに、僕らにはもはや琢磨の活躍は当たり前になってしまったのである。
シーズン序盤、開幕戦のオーストラリアGPでバトンが念願の表彰台をゲットし、その後も安定した戦いぶりをするなか、琢磨は3戦目のバーレーンと5戦目のスペインで5位入賞を果たすも、不運としかいえないエンジントラブルに見舞われ続けていた。それでも果敢なスタイルは観るものを魅了した。モナコでのスタートダッシュ、ドイツのニュルブルクリンクGPでは日本人初の予選2位となり、フロントローに並ぶ雄姿に興奮した。モナコ、欧州、カナダとリタイアする戦いが続いたが、アクシデントやトラブル、不運の中での走りに苛立ちを感じながらも、その半面で僕らは期待をますます膨ませていくばかりとなった。
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